中国で今年満期を迎える約7兆ドル(約1100兆円)の定期預金を抱える一般世帯が、より高い利回りの投資先を探している。この動きが、本土の金融市場にさらなる追い風をもたらす可能性がある。

長期化する不動産危機と株式リターン低迷を受け、多くの人々が銀行預金という安全資産に資金を移し、貯蓄がこれだけの規模に膨らんだ。金利が約1%まで低下する今、その資金は新たな受け皿を探し始めている。

投資家は、株式や理財商品と呼ばれる資産運用商品、保険へのシフトを検討しており、これは景気全体を支える持続的な相場上昇を育成しようとする中国当局の方針と一致する。

「資本市場でお金を稼ぐのが待ちきれない」と話すのは、杭州在住のミン・チェンさんだ。今月満期を迎える譲渡性預金(CD)200万元(約4500万円)を保有している。

公務員という職業上の制約で株式を直接購入できないため、投資信託に資金を投じる計画だという。預金金利は3.1%あるものの、最近の株高に乗り遅れたことを悔やみ、株価の一段高に賭ける。

華泰証券の張継強氏らアナリストが昨年12月に公表したリポートによると、2026年に満期を迎える1年物以上の預金は約50兆元に上り、昨年から10兆元増加する。約30兆元は国有大手銀行に預けられており、満期の多くが1-6月(上期)に集中するという。

 

事情に詳しい関係者によれば、低金利環境で着実なリターンを求める投資家が増え、大手保険会社の配当型保険への需要は非常に強い。資金シフトはすでに始まっている。

ここ1カ月だけで時価総額が1兆ドル余り増えた株式市場の力強い回復に後押しされ、株式に資金を投じる動きも出ている。

中国株は昨年4月以降、世界的な関税を巡る緊張の局面でも底堅さを示し、人工知能(AI)分野での進展が投資家を呼び込んできた。上昇はテクノロジー株で顕著で、上海証券取引所「科創板(STAR)」市場のSTAR50指数は今年に入ってから約12%上昇している。

金価格も過去最高値を更新しており、中国の投資家も買いに回り相場を押し上げている。

「慢牛市場」

中国の消費者が株価低迷期に最も有利な預金金利を求め、何百キロも移動して銀行を探し回っていた数年前から状況は一変。市中銀行は政府から景気支援のため低利融資を求められ、利ざやが圧迫されたことを受け、21年以降7回にわたり預金金利を引き下げた。中小行の中には、定期預金金利を1%近くまで下げたところもある。

資産運用会社の元研究員デイジー・ウー氏は株式やクオンツファンドで昨年25%のリターンを得たが、来月満期を迎える500万元の理財商品について、5%のリターンに不満を抱いている。

「今は主婦で、株式取引に積極的に参加する時間がある。今年の市場には楽観的だ」と上海在住のウー氏は言う。

より広い視点では、貯蓄が株式に向かう流れは、間接的かつ緩やかなものになりそうだ。これは、より良い資産形成と消費拡大を可能にするいわゆる「慢牛市場(slow bull market)」、つまり緩やかな強気相場を育みたいとの政府の意向だ。

UBSグループのアジア金融セクター調査責任者、顔湄之氏は、銀行預金から資金が流出するのは避けられないとしつつ、過去には毎年満期を迎える数十兆元規模の貯蓄の9割以上が銀行システム内にとどまってきたと指摘する。

顔氏は今週の上海での説明会で、「資金は自由に動く。ただ銀行の立場からすれば、仲介する理財商品や保険、ファンドを通じて、顧客をシステム内に引き留めることはできる」と語った。

華泰証券も、家計が預金から理財商品や債券型商品、配当型保険へと資金を再配分することで、株式市場が恩恵を受けるとみている。これらの商品が、一定の株式を保持しているためだ。

中国政府は主要株価指数が25年に数年ぶりの高値を付けた後、過去10年間に見られたブームと崩壊の再来を避けようとしている。本土株の指標CSI300指数は3年にわたる下落の後、2年連続で上昇し、26年は約3%高となっている。

当局はこの値上がりペースを速過ぎると判断し、信用取引の引き締めに先週動いた。関係者によると、規制当局は大手証券会社に対し信用取引需要の報告を求め、口座開設の積極的な促進や強気な相場見通しの押し付けを避けるよう要請した。

当局は取引動向を綿密に監視し、投機的な動きがあれば適時対応する方針だという。非公開情報だとして、関係者はいずれも匿名を条件に取材に応じた。

原題:China’s $7 Trillion Cash Pile Is Shifting Into Stocks, Gold(抜粋)

--取材協力:Jiyeun Lee.

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