(ブルームバーグ):グリーンランドを巡りトランプ米大統領が欧州諸国に貿易上の脅しをかけたことで、欧州側が保有する米国資産を縮小し、それがユーロを支える可能性があるとの見解を、ドイツ銀行のストラテジストが示した。
ドイツ銀行で外国為替調査責任者を務めるジョージ・サラベロス氏は18日付の顧客向けリポートで、欧州諸国が保有する米国の債券と株式は総額8兆ドル(約1260兆円)に上ると指摘。これは世界の残り地域を合わせた額のおよそ2倍に相当し、欧州は米国に対する最大の資金の貸し手だと論じた。
「西側同盟の地経学的な安定がその存在を脅かすほど破壊されつつある中で、こうした役割を欧州がこれまで通り積極的に担う理由は明確でなくなった」との見解をサラベロス氏は示し、「過去数日間の展開は、ドルのリバランスを一段と促す可能性がある」と続けた。
グリーンランドに関連したトランプ氏の新たな関税は欧州の政治的な結束を強めるきっかけとなる可能性もあり、ドルに対してユーロが今週売られることがあるとしても、短期にとどまるだろうとサラベロス氏は予想した。
実際、19日のアジア時間にユーロはドルに対し下落して取引が開始されたものの、欧州時間帯に入るまでに上昇に転じた。一方、欧州の主要株価指数と米国株先物は下落している。
サラベロス氏はまた、「向こう数日間に注目すべき重要なポイント」として、欧州連合(EU)が米国に対し、反威圧措置(ACI)を発動するかどうかを挙げた。フランスのマクロン大統領は発動を要請する意向だと、同大統領に近い関係者が匿名を条件に明らかにした。
「米国の国際投資の収支は過去最悪の純赤字で、米欧金融市場の相互依存はかつてないほど高まっている」とサラベロス氏は述べ、「資本を武器として活用する場合、貿易よりもはるかに大きく市場は混乱するだろう」との見解を示した。
言うは易し
一方、実際に米国資産を武器として活用するのはそれほど簡単ではないとの指摘もある。資産の大半は政府の管理が届かない民間のファンドで保有されており、報復目的で売却を進めようとする場合、欧州の投資家自身も損失を被る公算が大きいからだ。
トランプ氏が1年前にホワイトハウスに復帰して以来、同氏との対立を欧州各国は全般的に避けてきたこともあり、欧州が最終的にそこまで踏み込む可能性は低いだろうと、ストラテジストの多くはみている。
ソシエテ・ジェネラルの為替戦略責任者キット・ジャックス氏は19日、「米国の国際投資の純赤字は巨額で、ドルに対する潜在的な脅威ではあるが、それは外国にいる米国資産の保有者が金銭的な損失を覚悟して行動する場合に限られる」と説明。
「欧州の公的部門の投資家が米国資産の新規購入をやめる、あるいは売却を始める可能性はあるが、政治目的のために投資成績を犠牲にするようになるまでには、恐らく状況がもう少しエスカレートする必要があるだろう」と語った。
現時点では、欧州当局が域内投資家に対し、米国に対する投資配分を引き下げるよう促す可能性を探っているのかすら、判然としないままだ。カーステン・ブジェスキ氏らINGの調査部門は、保有米国資産というカードを欧州は理論的には持っているが、より穏健なアプローチにならざるを得ないだろうと指摘。
「EUが域内の民間投資家に米ドル資産の売却を強いる上で、できることはあまりない。ユーロ資産への投資を奨励しようとするくらいだろう」とブジェスキ氏は述べた。
原題:EU Weaponizing US Assets a Risk, Deutsche Bank’s Saravelos Says(抜粋)
‘Weaponizing’ $10 Trillion of US Assets Is Tough Ask for Europe(抜粋)
--取材協力:Paul Dobson.
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