人工知能(AI)分野への熱狂は、開発者ツールやベンチマークサービス、バックエンドシステムといった、通常は堅実とされる分野へも急速に及んでいる。これらは一般消費者が直接触れることのない領域であり、新たなテック投資の焦点となっている。

開発者がコードを記述・デバッグするのを支援するAIスタートアップの時価総額は、ユナイテッド航空に迫る水準となった。設立わずか2カ月のAIコンピューター企業が4億7500万ドルの巨額シード資金を調達し、近い将来にさらなる資金調達を計画している。AIモデルを評価するプラットフォームは、学術プロジェクトからスピンアウトして1年も経たないうちに、評価額約20億ドル(約3160億円)に達した。

こうした企業の多くには、米ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツ(通称・a16z)の型破りなチームが運営する、数十億ドル規模のファンドが関わっている。

a16zは2024年、AIインフラへの投資専用に12億5000万ドルの資金を調達した。同社が定義する「インフラ」の範囲は、AIを稼働させる高価な半導体チップやデータセンターを超え、消費者向けではなく技術系バイヤー向けに販売されるあらゆるAIソフトウエアを指す。具体的にはコーディングアプリケーション、基盤モデル、ネットワークセキュリティなどだ。

a16zは今月、この取り組みにさらに17億ドルを投入すると発表した。同社のマネージングパートナーのラグー・ラグラム氏は「インフラ企業が、将来最も重要な企業の一角となるだろう」と語る。

こうした賭けは実を結び始めている。ここ数カ月で、ストライプはアンドリーセン・ホロウィッツが支援する課金プラットフォーム「メトロノーム」を10億ドルで買収することで合意した。セールスフォースは、製造業向けAIプロバイダー「レグレロ」を買収し、メタ・プラットフォームズはAI音声企業「ウェーブフォームズ」を買収した。

通常、ファンドの成果は10年単位で判断されるもので、a16zの共同創業者ベン・ホロウィッツ氏は、ファンドのパフォーマンスを評価するには時期尚早だとしている。そのうえで、現時点では「これまで見た中で最高のファンドの一つだ」とも述べた。

バブルの懸念

とはいえ、現在のAI投資の多くの事例と同様、a16zのファンド成功がAIバブルを覆すものか、それともその典型例なのかは不明だ。

シリコンバレーは、AIビジネスが社会を再構築するという壮大な夢を実現するために、これまで以上に高い評価額で、投資家から前例のない額の資金を調達できることを証明した。企業がAIソフトウェアに対し、その価値に見合うだけの金額を支払う価値があるものと見なすかどうか、そしてそれがいつになるか、というところに、このブームの緊張の核心がある。企業が予想していたほどの支出をしない場合、a16zが現在支援する企業を含め、数兆ドル規模のテック投資はより不安定なものになるだろう。

a16zでAIインフラ分野を担うマーティン・カサド氏は、元計算物理学者で、長年のプログラマーでもある。同氏は「非公開企業の評価額は異常だ」と認めつつも、AIバブルについては心配していないと公言している。同氏は「これは魔法のようなものだ。ユーザーも需要も確かに存在する」と語る。

それでもカサド氏とa16zは、特定の投資トレンドを慎重に回避してきた。例えば、1兆ドル規模のAIデータセンター拡張に対しては、直接支援を避けている。

同社のインフラファンドの最大投資額は約6000万ドルで、大半はそれより小規模だ。狙いは早期参入にある。カサド氏は「私たちは途方もない数字が出るずっと前に投資する。大きな見出しになるような数字が出てきても、往々にしてそれより早く参入している」と語った。

異色の人材

AI企業をいち早く見つけ出すため、a16zのファンドは、ベンチャーキャピタリストとしては比較的型破りな経歴を持つチームに頼っている。カサド氏は、テレビゲームのプログラマーや鉄板焼きの料理人など、複数の仕事を掛け持ちしてノーザン・アリゾナ大学の学費を賄い、卒業後は、計算物理学のスキルを生かし、国防総省で兵器システムの試験に従事した。a16zでは、インフラに精通した技術専門家たちを周囲に集めている。

アルティメーター・キャピタルのパートナーであり、カサドと長年にわたりインフラストラクチャ投資に携わってきたジャミン・ボール氏は「多くのベンチャーキャピタリストは、投資銀行から採用されていた。カサド氏はチームを構築する際、従来の常識や経歴をまったく気にしていなかった」と語る。

スタートアップ「カーソル」のアプリ

こうした特徴こそが、史上最速で成長しているスタートアップと称される「カーソル」を見いだすうえで、決定的に役立った。a16zが投資した当時、AIコード生成ツールの主導権を多くのスタートアップが競い合う中、a16zのインフラチームのメンバーは、趣味のコーディング用途でそろってカーソルを使っていた。

a16z同様、カサド氏のファンドの戦略は、スタートアップに対して実践的な支援を惜しまないことだ。カサド氏はカーソルの取締役を務め、候補者と面談し、入社を説得したこともある。カーソルのオスカー・シュルツ社長によると、同社の計算能力が不足した際、カサド氏はその確保を手助けし、週末に一部が停止した時も、サポートを受けられるよう尽力していた。

AIブームの先にある不確実性を乗り切るには、企業を見抜く鋭い目と、鋼の意志が必要かもしれない。カサド氏は「うまくいかない企業はたくさん出てくるだろう。勝者はいつも人々の予想より少ないが、その規模は予想よりはるかに大きい」と述べた。

原題:Andreessen Horowitz Makes a $3 Billion Bet Against the AI Bubble(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.