家計所得の整理

筆者は、政府の家計支援よりも、賃上げ・利上げによる恩恵の方がずっと大きいと考えている。つまり、経済メカニズムを回して、勤労者への分配と金利正常化をすることがより大きな効果を生むと理解している。

その意味で、岸田政権や石破政権の推進してきた「好循環メカニズムを後押しする」政策の方針は正しかったと理解している。高市政権も、同様の方針にもっと軸足を置いてほしいと思う。

さて、これも実額でそのインパクトを評価することが可能である。内閣府のGDP統計の中にある「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報」は、まだ2025年4-6月までしか発表されていないが、極めて有用な統計データである。

直近1年間(2024年7月~2025年6月)までの家計可処分所得は、年間+13.9兆円の増加になっている(物価上昇分を上回っている)。

このうち、雇用者報酬の増加は+13.8兆円(伸び率4.5%)、財産所得+8.1兆円(伸び率26.8%)、自営業などの営業所得+0.0兆円、そのほか社会保障・税給付の純増+8.1兆円があった。

この数字からは、家計所得を増やすために大きいのは雇用者報酬であることがわかる。2024年の雇用者報酬は、実額で313.5兆円もあるから、それが3%以上伸びれば、それだけで家計の物価負担約10兆円は吸収可能になる。

2024年3月に日銀がマイナス金利を解除したので、家計の金利収入は2024年から大きく伸び始めている。過去1年間で+5.1兆円も伸びている。2025年9月末の家計金融資産残高は2,286兆円もある。

例えば、預金金利が+0.25%上昇すれば、預貯金残高1,021兆円に対して単純計算で2.55兆円の財産所得の増加が見込まれる。

物価の負担を相殺するには、0.95%の預金金利の増加があればよいという計算になる。与野党の政策提言では、もう少し財政依存一辺倒を改めて、以前のように経済の好循環を回すという発想を重視してはいかがだろうか。

※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生

※なお、記事内の「図表」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。