「ラグジュアリー旅行」の定義が変わりつつある。著名なインテリアデザイナーが手がけ、有名レストランが店を構えるホテルが世界中に乱立し、あまりにも画一的でありきたりとも思えるようになってきた。

ラグジュアリー旅行市場で最上位の顧客層の需要はかつてないほど高まっており、ホテルは差別化を図るためにより一層の工夫を迫られている。つまり、2026年に最も期待される共通項は、真の独立精神があるか、あるいは誰もが認めるレベルアップができるかのいずれかだ。

その一例が、フランス・プロバンス地方のプライベートアイランドにあるザニエール・ベンドールだ。所有するのは酒造大手ペルノ・リカールを率いる一族で、26年春にホテルとして開業する。輝く地中海沿岸の沖合にレストランやショッピング、ダイビング施設、そして家業にふさわしい複数のバーを備えた新たな旅行目的地が誕生する。

欧州にわずか4拠点しか持たない仏ホテルブランド、ラ・レゼルヴは、イタリア・フィレンツェのヴェッキオ橋近くに立つ壮麗な建物に6室のアパートメントホテルを開業する。歴史的都市の中心で、自宅にいるかのような居心地を提供するのが狙いだ。

一方、アマンのような大手ブランドも、まだ切り札を使い切ったわけではない。実際、あまりなじみのない目的地を訪れる場合や一生に一度の旅を計画する際に、消費者が最も信頼する選択肢であり続けている。このホテルのメキシコでの新規開業は、ロスカボスから約1時間半の距離にあるバハカリフォルニア東岸地域の発展を後押しするだろう。比較的開発が進んでおらず、にぎやかなクラブからも離れ、この地域では珍しく遊泳可能なビーチもある。

また、アフリカで最も名高い高級サファリキャンプを運営するシンギタは26年末、多くの野生動物が生息するボツワナのオカバンゴ湿原でも屈指の私営保護区についに進出する。サファリ通にとっては夢のような組み合わせだ。

大手ブランドが巨大市場に進出する際には、あらゆる手を尽くす必要がある。ロンドンでは、ウォルドーフ・アストリアが歴史的建造物アドミラルティー・アーチを改装し、最新の旗艦級ホテルとして生まれ変わらせる。ウォルドーフは25年にニューヨークの旗艦ホテルで8年に及ぶ20億ドル(約3100億円)規模の改修を終えたばかりだ。

それでもロンドン最大の開業案件にはならないかもしれない。注目は、グリーンパークを望むジョージアン様式の名建築ケンブリッジハウスで、現在オーベルジュコレクションが改装を進めている。早くから話題を集めており、予約開始と同時に部屋を確保するのが、滞在を実現する最善の策となりそうだ。

ザ・ヴィネタ・ホテル(The Vineta Hotel)

開業時期:1月

所在地:米フロリダ州パームビーチ

パームビーチには高級ホテルが数多くあるが、パリの最上級ホテル、ル・ブリストル・パリを傘下に持つ欧州のオートケル・ホテルズにとって米国初進出となるのがヴィネタだ。大陸的な優雅さ、旧世界の華やぎ、非の打ちどころのないサービスで知られるブランドだが、南フロリダではそれほどなじみがない。高級ブティック街のワース・アベニューから数ブロックの場所にあり、地中海リバイバル様式のデザインを備える築100年の建物で開業する。

大規模改修により、全41室の広々としたスイートルームが誕生した。建物の歴史と淡いピンクの外観に合わせ、寝室は柔らかなパステル調でまとめられている。スタッフが複数のバーカートで館内の共用スペースを回るといった遊び心もある。1台はシャンパン専用、もう1台はプールサイドで提供されるジェラート用。3台目にはバーバラ・シュトルムの美容製品用で、セラムやクリームを客室まで届ける。滞在を終えるころまでは日焼けだけでなく、輝く肌も得られるという趣向だ。客室料金は1497ドルから。

帝国ホテル

開業時期:3月

所在地:日本・京都

日本の名門ホテル、帝国ホテルが新規開業するのは30年ぶりだ。26年春に京都・祇園地区にある築90年の旧劇場を改装してオープンする。丁寧に保存された本館は、特徴的な柱や窓枠といった、かつての舞台空間の要素が目を引く。宿泊者専用のルーフトップバーからは、市街地の眺望と街路にともるちょうちんの明かりを一望できる。

全55室の客室は、日本杉の柱や畳など伝統的な素材を使用し、海外の著名デザイナーでなく地元の設計事務所が手がけた。結果として、周辺の華美な競合ホテルよりも控えめで、より忠実かつ本物の日本らしさを備えた仕上がりとなっている。料金は約1100ドルから。

ザニエール・ベンドール(Zannier Bendor)

開業時期:春

所在地:南フランス

仏蒸留酒業界の起業家ポール・リカール氏が1950年代、ロゼの名産地バンドール沖に浮かぶベンドール島を購入した当時、そこには何もなかった。リカール氏はこの岩だらけの島を社交場へと変え、ロシアの宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンや芸術家サルバドール・ダリも訪れた。リカール家は現在、この別荘を現代のラグジュアリー旅行の目的地へと転換しつつある。93室のホテルに加え、誰でも利用できるレストラン3軒とバー4軒、アートギャラリー、職人の店が立ち並ぶ小さな村も整備される。

広さ17エーカー(約6.9ヘクタール)のこの島では、ペタンクを楽しんだり、1200平方メートルのスパでくつろいだり、スキューバダイビングを満喫できる。フェリーで10分の本土では、プロバンスのブドウ畑や石畳の村、名高いファーマーズマーケットを巡ることができる。料金は約600ドルから。

アマンヴァリ(Amanvari)

開業時期:春

所在地:メキシコ・バハカリフォルニア

超高級ブランドのアマンがメキシコに進出し、静かなバハカリフォルニア東岸ケープの丘陵地に18棟の宿泊施設を開業する。アマン常連客は人目を避けて部屋にこもることも多いため、各施設にはコルテス海とラグーナ山脈を望む広々とした眺望と、豪華なリクライニングチェアに囲まれたプライベートプールが備わる。アマンの目玉の1つであるスパには、地域の伝統に敬意を払った現代的なサウナが設けられている。

南端のにぎやかなカボに比べ、東岸ケープのビーチは波が穏やかで非常に泳ぎやすいという利点があり、のんびり過ごすには理想的だ。近隣にはロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニア設計のゴルフコースや、18エーカーの有機農園と果樹園もある。宿泊料金は現時点で未定。

ザ・レッド・パレス(The Red Palace)

開業時期:4-6月(第2四半期)

所在地:サウジアラビア・リヤド

サウジアラビアの新たな開発地域、紅海に立ち並ぶ近未来的な水上バンガローに新たな競争相手が現れる。場所は意外にも、渋滞で知られる首都リヤドだ。1943年に建てられ、建国の父アブドルアジズ国王の邸宅として使われたアールデコ様式の王宮が、70室のホテルとして一般に開放される。王室の祝宴や国賓晩さん会が行われた歴史的空間はレセプションスイートとなり、全ての部屋にアブドルアジズ国王が愛した地元産のタイフローズの香りが漂う。

スパもまた徹底した配慮がなされ、全室が完全個室仕様だ。各トリートメントルームには、更衣室、サウナ、スチームルームが備わる。王宮体験の一環として、宿泊客には専属のパレスホストが付き、常識の範囲内であらゆる要望に応える。料金は未定。

ザ・クーパー(The Cooper)

開業時期:3月

所在地:米サウスカロライナ州チャールストン

優雅な南部建築、白い花を咲かせるマグノリアの並木、豊かなローカントリー料理で愛されてきたチャールストンは、レベルアップし続ける都市として今年トップクラスの旅行目的地となっている。ザ・クーパーは、都市型リゾートの設備とウオーターフロントの立地を初めて融合させ、市内にありながらビーチリゾートのような感覚を提供する。

広さ7000平方フィート(約650平方メートル)のウェルネスセンターと5軒のレストラン、屋上のインフィニティプールに加え、姉妹ホテルのチャールストン・プレイスでシェフのダニエル・ハム氏が手がけるレストランへの優先アクセスを1年間得られる点も魅力だ。さらに、水上から街を見る体験も外せない。宿泊客は専用マリーナから海岸線を巡るクルーズ船や、ダニエル島への水上タクシーを利用できる。料金は950ドルから。

ケンブリッジハウス・オーベルジュコレクション(Cambridge House, Auberge Collection)

開業時期:春

所在地:ロンドン

競争激しいロンドンのホテル市場に、メイフェアの歴史的建造物を舞台にした注目の新顔が登場する。かつて王子や首相が住んだ建物で、全102室の客室と共用空間はジョージ王朝時代の華麗さを表現する。精緻かつ独特な天井装飾、高さ19フィートの天井、豪華な暖炉が特徴で、英国王チャールズ3世の現在の邸宅と公園の緑を望む。

ぜいたくなスパで定評のあるオーベルジュらしく、古代ローマの浴場に着想を得たウェルネスエリアが2フロアにわたって広がる。そこにはロンドン中心部では珍しい温水プール2面と、ファイヤーピットが付いたリラクセーションエリアがある。メジャー・フード・グループの新たなレストランは、ニューヨーカーにとっては決め手にならないかもしれないが、メイフェアの別のエリアで成功したホテル、ザ・チャンセリー・ローズウッド内のレストラン、カーボーンと同様にロンドン市民の人気スポットになりそうだ。料金は未定。

フォーシーズンズ・カルタヘナ(Four Seasons Cartagena)

開業時期:5月

所在地:コロンビア・カルタヘナ

主に新市街のブティックホテルと旧市街の印象的なソフィテルで構成されてきたカルタヘナのホテル事情が、この春に大きく進化する。米ケーブルテレビ局HBOの人気ドラマ「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル」の追い風をなお受けるフォーシーズンズが、16世紀の聖フランシスコ修道院や1920年代の社交場を含む8棟の建物を統合して展開する。館内には131の客室と8つのバー&レストランが入居し、隠れ家的バーやステーキハウスも設けられる。

宿泊客はプロのダンサーによるサルサレッスンに参加し、屋上にある2面のプールで涼むことができる。客室は最低でも388平方フィートと広く、多くが回廊を望むバルコニー付きだ。コロンビアの古き良き魅力と、現代的な快適さの両立と言える。料金は約800ドルから。

ラ・レゼルヴ・フィレンツェ(La Réserve Firenze)

開業時期:6月

所在地:イタリア・フィレンツェ

ラ・レゼルヴ初のイタリア進出となるこのホテルは、ルネサンス期の建物や工房が軒を連ねるサント・スピリト通りに位置する。4年に及ぶ綿密な改修と、著名デザイナーのジル&ボワシエとのコラボにより、600年の歴史を持つパラッツォが高級ホテルへと生まれ変わった。フレスコ画の天井、装飾タイル、アーチ窓など、フィレンツェを象徴する歴史と芸術への敬意が随所に表れている。

客室は1-3ベッドルームの独立型アパートメント6室のみ。全てにフルキッチンと独立したリビングがあり、フィットネスクラブ、ライブラリー、ラウンジも利用できる。屋上テラスでは地元産ワインを楽しめるほか、屋内には「隠れ家的バー」もある。トスカーナ料理や、オーナーの私邸でのテニスといった体験プログラムも用意され、街の由緒ある通りで本当に暮らしているような滞在を演出する。料金は未定。

ザ・マルカイ(The Malkai)

開業時期:10-12月(第4四半期)

所在地:オマーン

単一のホテルではなく、3つの超高級ロッジから成る周遊型の施設だ。オマーン全体を効率よく、整った設備の中で体験できる。マルカイは、広大な砂漠と沿岸の農地、そして険しいアル・ハジャル山脈にそれぞれロッジを構える。各ロッジにはスパのほか、濃い赤とベージュが印象的な大理石のプールが備わる。個別予約はできず、3ロッジを巡る4-10日間の行程のプランのみが提供される。

独自の趣向として、宿泊客には「ムルシド」と呼ばれる専属スタッフが付く。ムルシドは執事兼運転手として、スポーツタイプ多目的車(SUV)の「ランドローバー・ディフェンダー」でロッジ間を移動しながら、砂漠でのデューンバッシングや海岸でのシュノーケリングなど、あらゆる体験を手配する。料金は未定。

シンギタ・エレラ(Singita Elela)

開業時期:12月

所在地:ボツワナ

シンギタは、アフリカ屈指の旅行目的地であるボツワナにロッジを持たないまま、5つ星サファリロッジの王者としての地位を築いてきた。だからこそ、多くの野生動物が生息する島や礁湖、草原、湿地から成る名高いオカバンゴ・デルタに進出する今回の動きに、関係者の期待は高まっている。シンギタが手がける40万エーカーのアブ私営保護区ではゾウやライオン、チーターの群れが見られ、木製の手こぎ船モコロやオープントップのジープなど、さまざまな方法で野生動物を観察できる多様性も魅力だ。

エレラの8つのテントはいずれも専用の温水プールと広い屋外デッキを備え、サバンナでは最高水準のぜいたくさが期待できる。シンギタの多くの最新プロジェクトと同じく、安定したWi-Fi環境、客室内ウェルネストリートメント、充実したワインセラーも完備する。デザインも大胆で、織物職人や陶芸家などアフリカの一流職人の作品を多用し、色彩豊かで地域性のある空間を作り上げる。料金は全て込みのオールインクルーシブで4500ドルから。

原題:Here Are the 11 Most Exciting Luxury Hotels Opening in 2026(抜粋)

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