トランプ米大統領は、看板の移民政策で国民の支持を失いつつある。

確かに、トランプ氏は南側の国境の安全確保という選挙公約については、速やかに実現した。だが2025年が進むにつれ、同氏の反移民政策は、ほとんどの国民の許容範囲をはるかに超えたものとなった。

トランプ氏は、米国が「侵略されている」と主張し、25年3月15日には、200人以上のベネズエラ人をエルサルバドルの巨大な刑務所・テロリスト拘禁センター(CECOT)に送還する口実として、敵性外国人法を発動した。

暴力犯罪者だけを国外追放しているというが、移民・税関捜査局(ICE)のデータによると、その大半は犯罪で起訴されていない。

ロイター通信とイプソスの世論調査によると、移民政策に関するトランプ氏の支持率は急落。昨年3月時点では支持が不支持を上回っており、その差は9ポイントあった。だが、それが逆転。12月は不支持が支持より11ポイント高くなった。

 

トランプ氏の移民政策を巡っては、4つの重要な決断があった。

受け入れ制限

バイデン前政権下で難民受け入れが急増し、米国の支援システムはひっ迫していた。トランプ氏は就任初日、大統領令を発令し受け入れプログラムを停止したのだ。これにより、申請中の難民も含め数千人が足止めされた。新たな受け入れ枠はわずか7500人となった。

批判の広がりや法的異議申し立てにもかかわらず、トランプ氏は自らの反難民姿勢を欧州諸国向けの新たな基準として推進している。米国務省は11月、X(旧ツイッター)で「大量の移民は西洋文明に存続の危機をもたらし、米国の主要同盟国の安定を損なう」と警告した。

法的地位の剥奪

トランプ氏は、一時保護措置で入国した人から法的地位を剥奪する手法により、不法移民の数を着実かつ大幅に増やしてきた。過去1年間で、ハイチ人やベネズエラ人、アフガニスタン人、ホンジュラス人ら、審査を経て米国に到着した人々の一時保護ステータスを終了、または終了しようとしている。

その結果、合法的に滞在していた120万人以上の移民が、間もなく国外退去の対象となる可能性がある。

最多収容者数

フロリダ州の一時収容施設は25年夏、非人道的な環境と恐ろしい呼び名「アリゲーター・アルカトラズ」で一気に知られるようになった。

トランプ政権が称賛するこうした施設への反発と、アリゲーター・アルカトラズと記したTシャツなど一部で販売された悪趣味なグッズへの激しい批判が起きた。当局は現在、増加する収容者に対応するため、民間刑務所や既存施設の活用を検討しているとされる。

アリゲーター・アルカトラズの収容者には、学生ビザ(査証)で滞在する大学院生など合法の移民や、米国民さえいた。適正手続きなしに数日から数週間拘束されたと訴える人もいる。

軍事化

公共の安全という名目で、トランプ氏はロサンゼルスやワシントン、ポートランド、シカゴへ州兵の派遣を命じ始めた。ICEと国境警備隊の連邦捜査官もこうした都市に集まっている。

マスクをしたICEの私服捜査官の姿が日常的になり、国境警備隊員は完全な戦闘装備を身に着け、犯罪歴のない移民に対する厳しい強制捜査や強硬な拘束を行った。

国外退去者の数では過去の政権下での方が多いものの、トランプ政権ははるかに攻撃的な戦術を展開している。ミネアポリスでは12月、抗議参加者が氷の塊を投げる中、捜査官が妊娠中とされる女性を引きずって道路を横断する様子が映像に収められた。

トランプ氏が実施している移民政策の狙いは明らかだ。国境の安全確保や「最悪の犯罪者」の国外退去、不法滞在者の全員強制送還以上のものを求めている。

米国のカルチャー自体が、数百年にわたる移民によって形成されたモザイクであるにもかかわらず、同氏は大量の移民を「アメリカ」文化を脅かす存在と見なしている。

最近では、米国の市民権を移民から剥奪する帰化取消し手続きに、月100-200件という過酷なノルマを設定した。市民権取得への長い道のりで、全ての障壁を乗り越えたと信じていた人々に恐怖を植え付ける新たな措置だ。

26年は、米国人が自らの内面を深く見つめ直し、これが自分たちが望む国であり、未来なのかを問う新たな機会となる。

(パトリシア・ロペス氏はブルームバーグ・オピニオンの政治・政策担当コラムニストです。ミネアポリス・スター・トリビューン紙でシニア政治エディター・記者として働き、編集委員も務めました。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:How Trump Lost the Public on Immigration: Patricia Lopez(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.