トランプ米大統領は3日、米国がベネズエラを「運営する」と表明し世界を驚かせたが、それが何を意味するのか、誰がベネズエラの実権を握っているのかを巡る不透明感が漂っている。

米軍に拘束されたベネズエラのマドゥロ大統領がニューヨークに移送されるさなか、デルシー・ロドリゲス副大統領は、米国による大統領拘束は「野蛮」かつ「拉致」だと断じた。それに先立ち、トランプ氏は「ベネズエラを再び偉大にする」ためにロドリゲス氏が米国と協力すると述べていた。

ベネズエラ最高裁判所は3日遅く、ロドリゲス氏に対し、代行として大統領権限を直ちに引き継ぐよう命じた。

混乱に拍車をかけているのは、人口約3000万人の産油国であるベネズエラを「運営」することが何を意味するのか、ホワイトハウスが詳細をほとんど明らかにしていないことだ。ある米政府当局者は、マドゥロ氏とその前任者ウゴ・チャベス氏を長年批判してきたルビオ米国務長官が、政権内で主導的な役割を担うことになると述べた。

トランプ米大統領は3日の記者会見で、米石油企業が多額の資金を投じてベネズエラの石油インフラを修復することになると述べた

現時点では、米軍や行政官をベネズエラに配置する具体的な計画は示されていない。しかし、トランプ氏は同国の石油資源に強い関心を示しており、米国は「石油に関する限り、ベネズエラで存在感を示す」と述べた。これは、制裁の免除措置を受けて現在もベネズエラで事業を継続しているシェブロンや他の米系石油大手の役割が拡大することを意味する可能性がある。

トランプ氏が米軍駐留に抵抗感を示していることや、ノーベル平和賞を昨年受賞した野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏を「すてきな女性」だが、権力を握る準備はできていないと評価したことは、本格的な政権交代よりもロドリゲス氏ら他のマドゥロ派に機会を与える決断を下したことを示唆している。

マドゥロ大統領と妻を乗せた飛行機は3日夕、ニューヨークの空港に到着。事情に詳しい関係者が匿名で語ったところによれば、マンハッタンで米当局の拘束下にある。

ニューヨークのウエストサイド・ヘリポートに到着したベネズエラのマドゥロ大統領(1月3日)

アトランティック・カウンシルのスコウクロフト戦略安全保障センターのバイスプレジデントでシニアディレクターを務めるマシュー・クローニグ氏は、「トランプ氏はアメとムチを使い分けることで、副大統領とその周辺の人々を実質的にコントロールし、米国が望む結果を引き出そうとしている」と指摘。「それがうまくいくかどうかは、今後の動向次第だ」と述べた。

トランプ氏のその日のニューヨーク・ポスト紙への発言が、そうした方針を裏付けているようだ。トランプ氏は、ロドリゲス氏が「われわれの望むように行動すれば」、米軍を駐留させる必要ないだろうと述べた。

この戦略は大きな賭けとなる。2016年大統領選で米国の「終わりのない戦争」を終結させるとの公約を掲げながら、トランプ氏はその後、イランやイエメン、ナイジェリア、カリブ海の標的への攻撃に米軍を投入してきた。

ベネズエラは数十年にわたる失政に苦しんできた。その結果、同国の石油インフラは衰退し、長期にわたってハイパーインフレが引き起こされ、多くの人が近隣諸国や米国へと逃れる事態となった。マドゥロ政権の崩壊は、さらなる混乱を招くリスクをはらんでいる。

マドゥロ氏に次ぐ権力者

トランプ氏は3日、フロリダ州パームビーチで行った記者会見で、ルビオ国務長官がロドリゲス氏と長時間にわたり協議し、同氏が協力に同意したと主張。「ロドリゲス氏は基本的に、ベネズエラを再び偉大にするために必要だとわれわれが考えることを実行する意思がある。とてもシンプルだ」と語った。

しかしその数分後、軍幹部に囲まれて国営テレビに出演したロドリゲス氏は、米国によるマドゥロ氏拘束を非難。同氏がベネズエラで唯一の大統領だと主張し即時釈放を求めた。

ロドリゲス氏は、ベネズエラ国内でマドゥロ氏に次ぐ権力者だとみなされている。情報相や外相などの職を歴任して頭角を現し、マドゥロ氏の最側近の一人となった。争点となった大統領選後の24年には石油相に任命された。

トランプ氏は移行を支援するための米軍派遣は確約せず、米政府としては石油インフラの保護と改善を確実にするのを助けるだけだと述べた。2025年のノーベル平和賞を受賞したマチャド氏を大統領に据える考えについては否定。ベネズエラ国民の支持を得ていないと主張した。

ロドリゲス氏(56)は国家予算の編成で重要な役割を果たしてきたほか、中国やロシアなどベネズエラの後ろ盾の国々との関係強化に向けた外交的な働きかけを主導してきた。最近では、米国の制裁下で原油輸出を維持するため、ベネズエラ産原油の購入拡大に加え、輸出に必要な希釈剤の提供を中国に強く求めた。

同氏はベネズエラ中央大学で弁護士資格を取得した後、ウゴ・チャベス元大統領の下で政治のキャリアを歩み始めた。父のホルヘ・アントニオ・ロドリゲス氏は1960-70年代のベネズエラ急進左派の有力者で、マルクス主義政党の創設者だった。1976年に国家治安部隊による拷問を受けた末、刑務所での取り調べ中に死亡しており、この出来事は娘のデルシー氏の政治人生において決定的な要素となっている。

同氏は周囲から長時間労働の人物として知られ、マドゥロ氏自身も最近、深夜、早朝を問わず、ロドリゲス氏がメッセージに対応していたと語っている。

Photographer: Carlos Becerra/Bloomberg

原題:Trump Snatches Maduro But Leaves Regime in Charge for Now (1)、Venezuelan VP Calls for Maduro’s Return, Defying Call From Trump(抜粋)

(ベネズエラ最高裁の命令などを追加して更新します)

--取材協力:Hadriana Lowenkron、Myles Miller、Natalia Drozdiak、Shamim Adam.

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