金融庁が不動産向け貸し出しの多い地方銀行の監視強化に乗り出したことが分かった。市況高騰を背景に、地銀が地元以外の案件に融資するケースが目立っている。一部の地銀に対してはヒアリングを実施しており、場合によっては立ち入り検査も検討する。

複数の関係者が明らかにした。地銀の不動産融資が拡大する中、金融当局が改めてリスク管理高度化の必要性を訴えるメッセージをより強めた形だ。不動産価格は今後も上昇する可能性がある一方、貸し倒れリスクの懸念も強まる。地銀には地元以外の市況分析能力など管理体制の強化が求められそうだ。

金融庁はこれまでも地銀に対し、不動産融資を巡るヒアリングを行ってきた。同関係者らによると、一部地銀では、引き続き地元ではなく需要が強い首都圏などへの「越境融資」に力を入れるケースも散見されており、金融庁は今年後半から監視を強化していた。現在、越境融資の比率が多い地銀などに絞り込み、これまでより精度の高いデータを活用するなどしてヒアリングを実施しているという。

金融庁の担当者はコメントを控えるとした。

国内では住宅やオフィスの不動産価格が上昇している。特に首都圏の価格高騰が顕著だ。国土交通省の不動産価格指数によると、2010年を100とした場合、25年9月の東京の住宅は180.7、南関東のオフィスは221.8(いずれも季節調整値)だった。住宅需要が増加しているだけでなく、新型コロナウイルス禍からの回復でオフィス需要も持ち直している。

昨今では資材価格、人件費の高騰も顕著だ。また、円安の進行もあって、国内不動産はまだ世界から見ると「割安」とされる。海外投資家からも資金が集まっており、高騰の一因になっている。

融資も活況だ。特に地銀にとっては融資先の拡大ニーズに合致している。日本銀行は10月に公表した金融システムリポートで、取引価格上昇のもとで「与信の⼤⼝化が進んでいる先もみられる」と分析した。ただ、不動産業のデフォルト率は低位で推移しているとも指摘した。金融機関に対して、不動産の価格変動やストレス時の影響などに留意したリスク管理を促している。

日本総研の大嶋秀雄主任研究員は地銀の越境融資について「新規取引を獲得できる一方、貸出条件が緩和的になりやすい。情報収集を含めた与信管理が困難」といった課題を挙げた。その上で、越境融資における貸し倒れに備えた保全比率が低位に抑えられていることなどから、「地銀は不動産市場の分析能力向上に加え、融資先との関係強化や保全改善を図る必要がある」としている。

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