中国が日本に対する経済的な報復措置の一環として日本向け航空便を減らすよう命じたことが、需要が弱い時期にある国内航空会社の収益性を一段と悪化させる可能性がある。

高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に中国が反発し、日中間の緊張が高まる中で、中国の大手航空会社が6年ぶりに通期黒字を達成するとの見通しの実現が危ぶまれている。

DBS銀行のアナリスト、ジェイソン・サム氏によれば、「今回の逆風は確実に業績に打撃を与え、現在のコンセンサス予想に下振れリスクが生じる」という。同氏は中国航空各社の利益圧迫が2026年前半まで続くとみている。

中国東方航空は日中を結ぶ路線の最大の運航会社で、中国南方航空や中国国際航空よりも需要後退の影響を受けやすい。春秋航空や吉祥航空といった規模は小さいが収益性の高い航空会社にも影響が及び得る。

ブルームバーグの集計によると、東方航空と南方航空、国際航空という中国3大航空会社は2020-24年に計2064億元(約4兆6000億円)の損失を計上。新型コロナ禍と国内競争の激化が重しとなった。3社はいずれも電子メールでのコメント要請に応じなかった。

 

運航制限は、脆弱(ぜいじゃく)さをはらむ時期に収益をさらに圧迫するとHSBCホールディングスのアナリスト、パラシュ・ジェイン氏は分析。中国の航空会社は通常、10月の国慶節(建国記念日)連休後に需要が急減し、翌年1月または2月の春節(旧正月)連休まで大きな祝日がないため、10-12月期は業績が一段と弱含みやすい。

対策

中国の航空会社は対策を打ち出し、余った運航能力をタイや韓国といった目的地に振り向けている。ロシアを訪れる中国人旅行者に対するビザ(査証)政策緩和も、中国の航空会社に新たな機会をもたらしている。

モルガン・スタンレーは航空スケジュール提供会社OAGのデータを引用し、12月だけで中国から日本への1日当たり定期便数が約50%削減されたと説明。来年3月末までの平均削減率は38%だ。

一方、日本路線の減便を補う形で、来年1月中旬以降のタイ向け予約は約40%増加しているという。

それでも、日本路線は旅客イールド、つまり有償旅客1人の飛行1マイル当たり平均収入という点で、中国の航空会社にとって最も収益性の高い路線だとブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、エリック・チュー氏は指摘する。

同氏は12月初旬のウェビナーで、他路線への運航シフトにより、売上高ベースで既に弱い旅客イールドにさらなる下押し圧力がかかり得ると説明。こうした変化は10-12月期決算には大きく表れない公算が大きいが、1-3月期には影響が出る可能性があると付け加えた。

それでも、長期的なファンダメンタルズには楽観的な兆しもある。人民元高が進めば、中国の航空会社にとってジェット燃料の購入コストが低下するためだ。

 

モルガン・スタンレーのチェンレイ・ファン氏らアナリストは、インバウンド訪中客の増加も中国の航空会社にとって主要な成長ドライバーだとリポートで言及。

国際線の乗客は一般に国内のレジャー客よりも運賃に敏感でないため、段階的な価格戦略を適用しやすいという。出張需要の持続的な回復も、航空会社の価格決定力をさらに支えると、同氏らはみている。

原題:Chinese Airlines See Hopes Dim for Profit Return With Japan Spat(抜粋)

--取材協力:Charlotte Yang.

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