(ブルームバーグ):防衛関連企業はこれまで、株式投資家にはディフェンシブ銘柄として支持されてきた。予測可能な収益、安定した利益率、確実な配当といった堅実さが評価されたためだ。だが、時代は変わりつつある。
戦闘機メーカーのロッキード・マーチンやミサイル大手のRTXといった巨大防衛企業は、依然として多くの投資ポートフォリオで重要な位置を占める。ただ最近では、こうした企業群に新たな顔ぶれが加わりつつある。テクノロジー企業に近い機動力のあるスタートアップだ。これらの新顔は急速な利益成長が期待され、高い企業価値が付いている。
株価上昇率で見ると、ドローンメーカーのクラトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズや衛星データのプラネット・ラブズ、データ分析企業のパランティア・テクノロジーズなどが上位に並ぶ。いずれも年初来で少なくとも2倍に上昇した。小型無人機のエアロバイロンメントや地理空間情報のブラックスカイ・テクノロジーも高いリターンを示している。
こうした企業の台頭は、戦争のあり方が変化する中で起きている。最も分かりやすい例が、ロシアの侵攻に対するウクライナのドローンを軸とした防衛だ。さらに、トランプ米大統領が長年続いてきた同盟関係を揺るがしたことで、欧州やアジアの各国は自国の軍事力や防衛能力への支出を拡大している。こうした資金の一部は、米国の防衛関連企業に流れると見込まれている。
オーシャン・パーク・アセット・マネジメントのジェームズ・セント・オービン最高投資責任者(CIO)は「2025年は防衛関連企業にとって『新たな夜明け』になった」と指摘。「防衛分野は長らくディフェンシブだった。今もある程度はそうだが、新たな局面を迎えつつある」と語った。
S&P1500航空宇宙・防衛指数は今年、民間航空機分野の堅調さにも支えられ、これまでに41%上昇。2013年以来の高い伸びとなり、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大ハイテク株の上昇率を約16ポイント上回る。
RTXやノースロップ・グラマンといった老舗企業も2桁の上昇を記録している。投資家は米国の軍事支出に加え、「ゴールデンドーム」と呼ばれるミサイル防衛計画などにも強い期待を寄せている。
極端なバリュエーション
ただ、軍需スタートアップへの投資にリスクがないわけではない。小型無人機メーカーのエアロバイロンメントは、今四半期の業績に慎重な見通しを示し、株価が急落した。株式市場全体で高バリュエーションへの警戒感が強まったことも影響し、10月の高値からは約40%下落している。
こうした売りが出た後でも、軍需スタートアップの株価バリュエーションは総じて高水準にある。クラトスは向こう12カ月の予想利益の約100倍の水準で取引されている。パランティアのPER(株価収益率)は約190倍だ。これに対し、RTXは27倍、ロッキードは16倍にとどまる。
一方、高バリュエーションに懸念を抱かない投資家もいる。軍需スタートアップは、暗号資産や人工知能(AI)関連銘柄で見られるようなリスクを受け入れる新たな投資家層の関心を集めているようだ。
JPモルガン・チェースのアナリスト、セス・サイフマン氏は19日の顧客向けリポートで「防衛分野の投資家が慣れ親しんできた手法とは異なるアプローチが求められている。従来のバリュエーション指標への依存は弱まり、個々のプログラムを理解する重要性が増している」と述べた。
原題:Shift in Modern Warfare Turns Defense Firms Into Growth Stocks(抜粋)
--取材協力:Isolde MacDonogh.
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