(ブルームバーグ):ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻の終結に向け協議する用意があると述べた。一方で、米国がロシアとまとめた和平案に対してウクライナと欧州が求めている修正には応じない姿勢を強調した。
プーチン氏は19日、テレビ中継されたモスクワでの年次記者会見で、トランプ米大統領と8月にアラスカで行った首脳会談で話し合われた和平提案に「事実上合意した」と発言。
「ロシアが何かを拒否したと言うのは誤りで、全く事実無根だ。問題は完全に、われわれに敵対する西側とその指導者の側にある」と主張した。
ロシアのドミトリエフ経済特使と米国のウィトコフ特使の協議を経て11月に浮上した28項目の和平計画を巡り、米国とウクライナ、欧州はここ数週間、集中的な交渉を続けていた。この和平案はウクライナがそれまで一貫して拒否していたロシアの要求をそのまま採用していたため、ウクライナと欧州の支援国を驚がくさせた。
ウクライナと欧州の働き掛けで最大の争点のいくつかは削除または修正され、協議はまだ続いている。この修正案が和平合意の土台となり得るとの楽観的な見方も広がりつつある。
それでも、プーチン氏は現時点でこの案を受け入れる意思があるかどうか明言していない。ウクライナおよびロシアの交渉団は今週末、米当局者とフロリダでそれぞれ会談し、戦後のウクライナの安全保障計画に関しても話し合われる見通しだ。
トランプ氏は「この紛争を終わらせるために真剣な努力をしている」とプーチン氏は述べ、「われわれとしても、来年は平和に、軍事的な衝突なしで暮らしたいと強く願っている」と続けた。
ただ、プーチン氏はウクライナ東部と南部の領土について、2014年以降10年以上にわたる戦闘でもロシア軍が軍事的に占領できていない地域も含む最大限の要求を後退させることを拒んでいる。22年にプーチン氏はウクライナに対する全面侵攻を命じ、欧州で第2次大戦以降最大の戦争を引き起こした。
交渉を可能にするための停戦の呼び掛けも、プーチン氏は繰り返しはね付けている。ロシアに戦争目的を変える意思はないと米国は10月に結論づけ、トランプ大統領はプーチン氏とブダペストで2度目の首脳会談を行う計画を中止した。
プーチン氏は、ウクライナに展開しているロシア軍兵士の数は70万人だと語った。西側のウクライナ支援国は、22年の全面侵攻開始以来、110万人余りのロシア軍兵士が死傷したとみている。そのうち、今年だけで約40万人に上るという。
欧州連合(EU)加盟国の首脳は19日未明までかかった交渉の末、ウクライナに今後2年で900億ユーロ(約16兆6000億円)の融資を行うことで合意した。この資金は共同債で調達され、域内で凍結されているロシア資産を利用する当初案から大きく変更された。
一方、ロシア経済は前例のない規模の米欧の制裁に持ちこたえてはいるものの、苦境は深まりつつある。石油・ガス収入を積み立てていた基金は半分以上が取り崩され、成長減速と石油・ガスを含むコモディティー収入の減少で財政赤字は拡大している。
こうした中で膨らむ戦費を賄うため、ロシアは高コストの借り入れへの依存を強めている。今年の国債発行額は7兆9000億ルーブル(約15兆4300億円)と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の最中だった2020年に記録したこれまでの最高を大きく上回っている。
ウクライナ、地中海でロシアタンカー攻撃
秘密裏にロシアの石油を輸送する「シャドーフリート(影の船団)」のタンカーを、ウクライナが初めて地中海で攻撃した。ウクライナは無人機(ドローン)による攻撃を、一段とエスカレートさせた。
慎重に取り扱うべき情報を話しているとして匿名を要請した関係者によると、攻撃を受けたのは全長250メートル石油タンカー「Qendil」。攻撃を受けた際に積み荷はなかったという。
ウクライナが石油タンカーを地中海で攻撃したのは初めてで、国境から2000キロメートル近く離れている。積み荷はなかったため、環境に影響を及ぼすリスクはないと、関係者は述べた。
原題:Putin Says He’s Ready to End War Though Rejects Concessions (2)(抜粋)
(第10段落を挿入し、ウクライナのタンカー攻撃について最終3段落を加えます)
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