日本銀行は16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1%に引き上げると決めた。利上げは昨年12月以来、約半年ぶり。植田和男総裁が就任してから4度目となる。

1%は実に約31年ぶりの高水準だ。1%という節目を迎え、超低金利時代には見えなかった社会や経済活動への影響も大きくなりつつある。私たちの懐事情にはどのような影響が及ぶのだろうか。

1世帯5000円の上振れ

みずほ総合研究所の服部直樹チーフ日本経済エコノミストは、1%への利上げを前提に家計への影響を試算した。政策金利0.75%を前提とした昨年12月の試算から、影響額などを見直した。

プラス効果として、普通預金の利子収入が7000億円、定期預金が8000億円になると分析した。一方、住宅ローンの利払いも増え、マイナス効果も5000億円生じるとはじき出した。

日本の紙幣

家計全体では、差し引きプラス1兆円となる。1世帯当たりに換算すると2万円のプラスとなる。昨年12月時点の試算から、それぞれ2000億円、5000円上振れした。

三菱UFJ銀行は同日、普通預金金利を8月3日以降、0.3%から0.4%に引き上げると発表した。同時に、変動型住宅ローン金利の基準となる短期プライムレートは同2.125%から2.375%に引き上げる。

住宅ローンが重荷に

世代別では影響に明暗が分かれる。服部氏の試算によれば、世帯主の年齢が50代以上ではプラスになる一方、40代までの世帯はマイナスとなる。高齢世帯は住宅ローンなどの借金返済が進んでおり、金利上昇の恩恵を受けやすいためだ。

70歳以上の世帯は1世帯当たり年間4万2000円のプラスになるが、30代の世帯では同2万1000円のマイナスになる。

高齢世帯は定期預金を含む貯蓄が多く、金利上昇の恩恵を受けやすい一方、若い層の世帯は住宅ローンの残債が多いことに加え、貯金もまだ少ないため、マイナス効果がより重くのしかかる構図だ。

さらに、負債を持つ世帯に限定するとマイナス額が膨らむ実態が浮かび上がる。

29歳以下の世帯で年間4万1000円、30代では同3万8000円、40代は同2万1000円のそれぞれマイナスとなる。若い世帯ほど負担が大きくなる。最近は多くの人が住宅ローンを変動金利型で借り入れているため、利上げによる負担増が目立つ。

ただ、変動金利型の住宅ローンの多くは、元利返済額の見直しを5年ごとに行う「5年ルール」と呼ばれる仕組みが適用されている。このため金利が上昇しても月の返済額が直ちに跳ね上がることはない。

賃金アップや資産構築の機会も

もっとも、これらの試算は利上げの影響だけに焦点を当てたものだ。物価が上昇する中でも、家計の支えとなる材料はいくつかある。

その一つは給料だ。日銀が利上げの判断で重視する賃上げは高水準が続いている。連合が公表した2026年春闘の途中集計でも平均賃上げ率は5.02%となった。近年は初任給も大幅に上がっており、若年世代には追い風要因だ。

「貯蓄から投資へ」の流れに乗ることも重要だ。日銀が3月に発表した資金循環統計によると、家計の金融資産のうち、現預金(1140兆円)の比率は49%だった。日本の家計には投資拡大の余地がある。

インフレが進む中で、資産を現金のまま持ち続ければ価値が目減りする一方、金利上昇に伴い投資妙味が増す資産や金融商品もある。投資に抵抗感がある人は、まずは税制面のメリットが大きい少額投資非課税制度(新NISA)などを活用するのも手だ。

1%という金利水準は大きな節目だ。投資にはリスクも伴うが、「行動しないリスク」も無視できなくなってきた。一人ひとりがリスクに向き合いながらも環境変化を味方につけ、家計の未来を切り開く力がより問われそうだ。

(6段落目に三菱UFJ銀行の預金金利の引き上げなどを加えます)

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