(ブルームバーグ):人工知能(AI)ブームが株式市場をけん引し、2026年には企業借り入れの波が起きると期待する投資家にとって、データセンターをめぐるわずかな不安材料でも市場が動揺することが、ますます鮮明になってきた。
今回の不安材料は、ソフトウエア大手のオラクルがミシガン州で進めているデータセンターの資金調達を巡るものだ。プロジェクト自体はおおむね順調に進んでいるが、重要な異変が起きた。AIインフラの急速な拡大で長年協力してきた資産運用大手ブルー・アウル・キャピタルが、出資を見送った。
オラクルは声明でブルー・アウル離脱を確認した。この事実だけでオラクルの株価は再び急落し、同社のデフォルト(債務不履行)に備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、終値ベースで2009年以来の高値に近づいた。
事情に詳しい関係者らは、ブルー・アウルが抜けてもこれまでオラクルが手がけた他の案件と同様、ミシガン州のプロジェクトは進行していると述べた。非公開の取引に関する情報であることを理由に匿名で話したこれらの関係者によれば、米大手投資会社のブラックストーンが株式引き受けを伴う出資を巡り交渉中だ。
大手米銀のバンク・オブ・アメリカ(BofA)も、このプロジェクトの支援でおよそ140億ドル(約2兆1800億円)の債務取引を主導し、他の銀行や投資家を呼び込む段階にあると関係者らは述べた。
オラクルは17日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道を受けて、出資契約の最終交渉が「予定通り進行中」であり、計画どおりだとの声明を発表したが、出資パートナーは特定しなかった。オラクル株は17日の米市場で一時6.1%下げた。
ミシガン州のデータセンター開発を担うリレーテッド・デジタルの広報担当者は、同社の出資パートナーは「この分野において卓越した専門知識を有している」とし、建設は来年第1四半期に本格的に開始される見通しだと述べた。
ブラックストーンとBofA、ブルー・アウルの担当者はいずれもコメントを控えた。
オフ・バランスシート
データセンター建設に使われるプロジェクトファイナンスの枠組みは通常、資金の80%が債務、残り20%がエクイティーで構成される。データセンターの敷地は通常、エクイティー投資家兼デベロッパーが所有する。
このスキームにおいて、オラクルは資金の借り手ではなく、施設を使用するための長期リースを提供する役割を担う。これがキャッシュフローを生み出すため、貸し手はこの取引に安心感を持てるようになっている。
オラクルは他の拠点でも、このようなオフバランスシート(簿外)の資金調達を利用してきた。ウィスコンシン州とテキサス州でのデータセンター施設は380億ドルの債務パッケージに支えられ、開発自体はバンテージ・データ・センターズが担う。またニューメキシコ州に新設されるデータセンター群には、180億ドルのローンが用意されるが、この案件ではブルー・アウルがエクイティーを提供している。
ブルームバーグのマクロストラテジスト、マイケル・ボール氏は「より大きな問題は、市場がかつてのような『押し目買い』の自動クッションを失ったことだ。以前の市場はAI例外主義を享受していた。オラクルに対するネガティブな見方は、幅広いハイテク株を擁するナスダック指数に対するセンチメントと同義語になっている」と述べた。
オラクルのデータセンター建設は、OpenAIおよびソフトバンクグループとで主導する「スターゲート」プロジェクトの一環で、同プロジェクトは全米のAIインフラ拡充に短期間で5000億ドルを投じる計画だ。
原題:Oracle-Blue Owl Decoupling Rattles Markets Ahead of Debt Deluge(抜粋)
(オラクルの資金調達スキームについて説明し、エコノミストの分析を加えます)
--取材協力:Brody Ford、Katherine Doherty.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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