企業が調査回答に使える時間が長くなれば、得られるデータも増える公算が大きい。今回の米雇用統計でまさにそれが起きた。

9月と11月分の統計公表が政府機関閉鎖で遅れた結果、企業は雇用データを報告する時間が増え、労働統計局(BLS)はより多くの回答を集めることができた。このことは統計の精度向上につながるとみられている。

データが追加されるにつれ、速報値は改定される可能性があり、その幅が大きいと、労働市場の見方自体が変わるケースもある。

BLSは改定によって、時間の経過とともに数値が正確になるとしているが、スピードと引き換えに公表を遅らせる価値があるのかといった批判もある。最近はとりわけ、改定が政治問題化しつつあるとの指摘も出ている。

2013年から17年初めまでBLS局長を務めたエリカ・グロシェン氏は「改定があるプログラムでは、スピードと正確性のバランスを取ろうとしており、そうした問題が生じる。両方を提供したいが、同時にはできない」と述べる。

エコノミストらは、特定の月でどれだけデータを回収できたかを示す回収率に注目している。

雇用統計の第1回収集期間の回収率は、9月が80.2%、11月が73.8%と、ここ5年で最も高い水準となった。11月分の公表と同時に示された10月の回収率も73.9%と同様に高かった。BLSは回収率上昇について、回収期間が長かったことを理由に挙げている。

BLSは政府機関閉鎖中、データ収集と大半の業務を停止していたものの、企業はその間も独自に電子的に雇用データを提出し続けていたとBLSは説明している。また政府機関再開後、企業の回答期限はさらに延長された。

BLSが16日公表した11月の雇用統計によると、9月の非農業部門雇用者数増加分は1万1000人下方改定された。今年の初回改定としては比較的小幅だ。

ただし政府機関閉鎖の影響で、9月の雇用者数速報値が発表されたのは当初予定の10月3日ではなく、11月20日だった。その時点でデータはかなり鮮度を欠いており、エコノミストや投資家は民間のデータソースを使い、雇用情勢を分析していた。

インフレーション・インサイツのオマイル・シャリフ社長は「改定幅が小さいのはいいが、5、6週間も待つだけの価値はないと思う」と話す。

かつてBLSで雇用測定を統括していたマイケル・ホリガン氏によれば、必要なのは1、2週間の集計期間延長にとどまる可能性がある。

9月のブログ投稿でこうした延長は改定幅を縮小させると分析した同氏は、BLSが2回目の企業サンプルを集計する段階で回収率が約60%から90%へ上昇することにも言及し、「どれほど改善の余地があるかを示唆している」とコメントした。

雇用統計はここ数カ月、より大きな注目を集めている。トランプ大統領が8月、過去数カ月の大幅な改定を「重大な間違い」と批判してBLS長官を解任したためだ。

後任に指名されたヘリテージ財団のチーフエコノミスト、E・J・アントニ氏は、データ収集の問題が解決するまで月次報告を停止し四半期データのみを公表する案を示していたが、トランプ政権は最終的にアントニ氏の指名を取り下げた。

月次改定に加え、BLSは毎年、失業保険の税記録に基づくより正確だがタイムラグのある年次ベンチマーク(基準)改定も実施している。このプロセスはここ数年、大幅な年次改定につながっている。

BLSが9月に発表した暫定値によれば、今年3月までの1年間の雇用者増は91万1000人の下方改定となりそうだ。下向き改定幅は同統計史上で過去最大。1カ月当たりでは7万6000人近い下方改定となる。確定値の発表は来年2月に予定されている。

BLSは16日、ブルームバーグのコメント要請に応じなかった。

原題:Speed Vs. Accuracy of US Jobs Data Rekindled After Shutdown (1)(抜粋)

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