(ブルームバーグ):2026年度の税制改正議論が大詰めを迎えている。自民党は防衛力強化の財源確保に向け、所得税の増税を27年1月から実施する方向で調整を進める。週内にも大綱をとりまとめる。
自民は、所得税額に1%を新たに付加する「防衛特別所得税(仮称)」を課し、27年1月から実施する案を検討する。同時に、東日本大震災の復興財源に充てる「復興特別所得税」を1%引き下げる。単年度の国民負担は当面変わらないが、復興特別所得税の課税期間を10年間延長するため、長期的には負担が増す見通し。
自民税制調査会は12日に税制改正の大半について案を取りまとめたが、防衛財源を巡る所得増税など一部の項目は結論を持ち越した。連立政権を組む日本維新の会には賛否の声があり、大綱にどう落とし込むかが焦点となる。
防衛財源を巡っては、23年度税制改正大綱で、所得、法人、たばこの3税を引き上げて確保する方針を掲げた。法人税とたばこ税は、昨年末に決めた25年度大綱で26年4月からの実施を明記。だが、所得税に関しては「年収の壁」の引き上げ状況を勘案しつつ「引き続き検討する」として先送りしていた。
米国は11月にまとめた国家安全保障戦略で、台湾海峡における中国の威圧行動を念頭に「米国と同盟国の能力強化」を提唱。日本に対しても防衛費の増額を求めている。台湾有事を巡る高市早苗首相の発言を機に中国が対日圧力を強めるなど、安全保障環境が一層厳しさを増す中、日本は防衛財源問題の決着を迫られている。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは8日のリポートで、仮に大幅な防衛費増の方向性が見えてくれば長期金利の上昇と円安が加速すると指摘。「金融市場は株安を伴う『トリプル安』『日本売り』の危機的様相を見せ始める可能性が出てくるだろう」との見方を示した。
政府は22年、防衛力整備に5年間で約43兆円を投じ、国内総生産(GDP)の1%程度に抑えられてきた防衛費を27年度までに2%にする方針を示した。高市政権は25年度補正予算案で、防衛費に関連費用も含めて1兆円余りを計上し、2%目標を2年前倒しで達成。さらに防衛力の抜本的な強化へ26年中に安保関連3文書の改定を目指している。
税制改正の他のポイント
- 年収の壁
- 現行の160万円から178万円に引き上げを検討-日経報道
- 上げ幅か対象拡大が主な論点に
- 現行の160万円から178万円に引き上げを検討-日経報道
- 賃上げ促進税制
- 25年度末で法人税負担を減らす対象から大企業を外す
- 中堅企業は26年度の適用条件を厳格化し、同年度末で除外
- 国際観光旅客税(出国税)
- 出国1回につき1000円から3000円に引き上げ-実施時期は26年7月
- 超富裕層向け課税の強化
- 非課税枠を1億6500万円に半減、税率は22.5%から30%に
- 小額投資非課税制度(NISA)
- 「つみたて投資枠」を18歳未満にも対象拡大
- 総額600万円まで、引き出しは12歳から
- 「つみたて投資枠」を18歳未満にも対象拡大
- 暗号資産関連の取引で得た所得に対し一律20%課税、株式並みに引き下げ
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