長年にわたり職場でキャリアの前進を目指してきた女性たちが今、昇進の機会から距離を置き始めている。

働く女性を支援する非営利団体LeanIn.orgとコンサルティング会社マッキンゼーが9日に公表した最新の調査によると、女性の昇進意欲が男性を下回り、過去10年続いた傾向が逆転したことが明らかになった。

同調査で昇進を望むと回答した女性の割合は、エントリーレベルで69%、中堅クラスで82%、上級管理職で84%だった。男性ではこの割合がそれぞれ80%、86%、92%となっている。これまでは女性の昇進意欲は男性とほぼ同水準で推移していた。

Photographer: John Lamb/Photodisc

こうした変化の背景には何があるのか。メタ・プラットフォームズの元幹部でLeanIn.orgの創設者であるシェリル・サンドバーグ氏は、女性の意欲が弱まったのではなく、企業側の支援が後退している点を指摘する。調査対象企業の約20%は、女性のキャリア向上を支援する具体的な施策を持たないと回答した。

「企業があらゆる従業員を適切に支援しなければ、女性が昇進から距離を置く状況が生まれやすくなる」と同氏はインタビューで語った。

シェリル・サンドバーグ氏

7月から8月にかけて9500人超の従業員を対象に実施された今回の調査(女性の職場環境に関する米調査としては過去最大規模)は、職場文化の広範な変化を示唆している。

負担と成果を見つめ直す動き

女性が職場で一歩前に出ることを促すサンドバーグ氏の著書「Lean In」は2013年に刊行された。当時は、女性の昇進を後押しする機運が高まった一方で、昇進の負担を女性に押しつけるとの批判もあった。その後、新型コロナ禍や保育費高騰など複数の要因が重なり、働く女性の間では成功の捉え方だけでなく、十分な支援がない職場で昇進を追い求めること自体を見直す動きが広がった。

ニューヨーク大学スターン経営大学院のアリソン・テイラー准教授によれば、昇進意欲での男女の差は、努力に見合う成果が得られないとの思いが広がる現状を映し出している。職場での支援後退や手頃な保育サービスの不足が重なったことで、女性の間では、過大な負担を引き受けて自身の生活を大きく変えることの是非を見つめ直す動きが強まっているという。

トランプ米大統領が「違法なDEI(多様性・公平性・包括性)」と称する取り組みの排除を指示したことを受けて、企業の間では各方針を見直す動きが拡大。ジェンダー多様性を支援する施策の実施率が2017年の88%から2025年には67%へ低下したことも、今回の調査では明らかになった。

さらに従業員にオフィス復帰を求める動きも、女性労働者には不利に働いていると調査報告書は指摘している。

LeanInのレイチェル・トーマス最高経営責任者(CEO)は「米企業は女性への取り組みを後退させており、女性自身もその影響を感じている」と述べたうえで、「この二つが重なれば、深刻な事態を招きかねない」と警鐘を鳴らした。

サンドバーグ氏は「これは経済の生産性に関わる問題だ」と9日のブルームバーグTVでのインタビューで指摘。「私たちは経済成長を最大化したいのか、労働力の力を最大限に引き出したいのか。いま岐路にあり、企業は判断を迫られている」と語った。

原題:Women Are Now Leaning Out in the Workplace, Sheryl Sandberg Says (2)(抜粋)

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