(ブルームバーグ):欧州連合(EU)は戦争で疲弊するウクライナへの資金支援について、2つの案を提示した。ロシアの凍結資産を裏付け資産とした融資、または共同債発行により調達した資金を担保とした融資のいずれかを選ぶことを示唆した。
これに先立ち、凍結資産の大半を預かる決済機関ユーロクリアがあるベルギーは、凍結資産利用の案を拒否。同国だけが凍結資産の返済義務を負わされる懸念が解消されていないと主張した。同案では、ロシア中央銀行の凍結資産を活用し、ウクライナの資金需要のうち900億ユーロ(約16兆3100億円)を賄うことが想定されている。
EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、この計画がベルギーだけに債務負担を負わせることはないと主張。

計画の発表に当たって同委員長は「ベルギーの懸念には、われわれは極めて注意深く耳を傾けてきた」と述べた上で、「加盟国を保護し、可能な限りリスクを低減するための強力なセーフガードを整えた」と説明した。
それでもベルギーは反対を続けており、米国が支援を打ち切ったウクライナに新たな資金を提供しようとするEUの取り組みは、またしても障害に突き当たっている。ウクライナは数カ月以内にも資金繰りに窮する見通しで、関係当局は時間との闘いを迫られている。
和平交渉を急ぐ米国も、欧州に対する圧力を強めている。トランプ政権は欧州に対し、凍結資産の活用を促す一方で、米国が凍結資産を戦後の投資に活用する可能性も示唆している。
フォンデアライエン氏は、今回の提案が平和の実現に役立つと指摘し、計画を伝えたベッセント米財務長官は「好意的に受け止めていた」と明らかにした。
「欧州はロシアが支払う侵略戦争のコストを引き上げている」とフォンデアライエン氏は述べ、「今回の提案は、ロシアが交渉に応じるさらなる誘因となるはずだ」と続けた。
多くのEU首脳は、ウクライナに必要な多額の資金を提供する上で、ロシアの凍結資産利用が最も実現可能な手段と見なしてきた。
だが、ベルギーは法的責任を追及される事態を恐れ、その構想に抵抗を続けている。
ベルギーのプレボ外相は3日朝、北大西洋条約機構(NATO)外相会合を前に「欧州委員会が本日提示する文面は、われわれの懸念に満足できる形で対応していない」と語った。
これに対してフォンデアライエン氏はベルギーが孤立することはないと強調し、「一つ確かなのは、負担はEUで共有される。それが欧州流だ」と述べ、懸念の払しょくに努めた。
EUの当局者は凍結資産活用の計画を18日にブリュッセルで開く首脳会議で決着させたい考えだが、その実現は現時点で不透明だ。
プレボ氏は「ベルギーは常に協議に応じる姿勢であり、今もそうだ。しかし、われわれの声が聞き入れられていないという、もどかしい思いを抱いている。われわれの懸念は軽視されている」と語った。
ベルギーの反応を受けて、他の資金調達案を再検討する動きが出る可能性もある。欧州委員会は、加盟国によるウクライナへの補助金拠出や、EUが共同債を発行して融資の裏付けとする案も検討しているが、いずれも加盟国間で広く支持されているとは言いがたい。
プレボ氏は3日、共同債発行に前向きな姿勢を示し、「それはよく知られた、堅実かつ確立された選択肢であり、予測可能な枠組みを持っている」と述べた。
同氏の発言直後、ドイツのワーデフール外相は、凍結資産を活用する選択肢は依然として実現可能だとの見解を示した。ベルギーの懸念は正当だとしつつ、「問題は解決可能だ」と主張した。
また、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ロシア凍結資産を担保にしたウクライナ向け融資を下支えするために、ECBがEU規則に違反することはないと述べた。
ラガルド氏は3日、ブリュッセルで欧州議会議員らに、「私自身が、また私のチームがこれまで非常に明確に述べてきたのは、できる限りのことはするが、条約には違反しないということだ」と述べ、「私は条約に違反するためにECB総裁に任命されたわけではない」と言明した。
原題:EU Proposes New Plan to Use Russian Assets to Fund Ukraine (1)
Lagarde Says ECB Won’t Violate EU Treaty Over Russian Assets
(抜粋)
(最終2段落を加えます)
--取材協力:Aaron Eglitis.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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