ロシアの凍結資産を担保として利用し、ウクライナに融資を行うという欧州連合(EU)の新たな法的提案をベルギーは拒否した。

EUの執行機関である欧州委員会は、2100億ユーロ(約38兆円)にも上るロシア中央銀行の凍結資産を裏付け資産としてウクライナに融資を行う法案を数時間後に発表する予定だったが、ベルギーはさっそく水を差した。

ベルギーのプレボ外相は3日朝、北大西洋条約機構(NATO)外相会合を前に「欧州委員会が本日提示する文面は、われわれの懸念に満足できる形で対応していない」と語った。

ベルギーの拒絶は予想外で、ウクライナ向けの新たな資金支援計画を構築しようとするEUの取り組みに再び障害が発生した格好になる。ウクライナは数カ月以内にも資金繰りに窮する見通しで、時間がなくなりつつある。

ロシアの全面侵攻開始から4年が経とうとする中で、多くのEU首脳は、ロシアの凍結資産利用がウクライナに必要な多額の資金を提供する上で、最も実現可能な手段と見なしてきた。

だが、凍結資産の大半を預かる決済機関ユーロクリアがあるベルギーは、法的責任を追及される事態を恐れ、その構想に抵抗を続けている。

プレボ氏は「資金を使い、そのリスクにわれわれだけが向き合わされるというのは容認できない」と述べた。

欧州委員会や他のEU加盟国はこうした懸念を和らげようとしてきたが、ベルギーは提案されている法的選択肢に依然として納得していない。

プレボ氏は「ベルギーは常に協議に応じる姿勢であり、今もそうだ。しかし、われわれの声が聞き入れられていないという、もどかしい思いを抱いている。われわれの懸念は軽視されている」と語った。

2週間後の12月18日にブリュッセルで開かれるEU首脳会議で最終合意にこぎつけるため、欧州委員会が3日に発表する法的提案が突破口になることを当局者は期待していたが、その見通しは不透明になりつつある。

ベルギーの反応を受けて、他の資金調達案を再検討する動きが出る可能性もある。欧州委員会は、加盟国によるウクライナへの補助金拠出や、EUが共同債を発行して融資の裏付けとする案も検討しているが、いずれも加盟国間で広く支持されているとは言いがたい。

プレボ氏は3日、共同債発行に前向きな姿勢を示し、「それはよく知られた、堅実かつ確立された選択肢であり、予測可能な枠組みを持っている」と述べた。

同氏の発言直後、ドイツのワーデフール外相は、凍結資産を活用する選択肢は依然として実現可能だとの見解を示した。ベルギーの懸念は正当だとしつつ、「問題は解決可能だ」と主張した。

原題:Belgium Rejects EU Plan to Tap Russian Assets for Ukraine (1)(抜粋)

--取材協力:Aaron Eglitis.

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