アマゾン・ドット・コムのクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、自社の人工知能(AI)向け最新チップの市場投入を発表した。エヌビディアやアルファベット傘下グーグルの製品に対抗できるハードウエアの販売を強化する。

AWSのバイスプレジデント、デーブ・ブラウン氏はインタビューで、同社のアクセラレーター「Trainium3」が最近、一部のデータセンターに設置され、顧客向けには2日から利用可能になると説明。「来年初めには非常に速いペースで拡大し始める」と語った。

AI分野で存在感を高めることを狙ったアマゾンの戦略で、チップの推進は重要な要素一つだ。AWSはレンタル型のコンピューティング能力とデータストレージサービスの最大手だが、AIツールを開発する主要企業の間で同様の支配的地位を確立するには苦戦している。

アマゾンではなく、ChatGPTの開発元オープンAIと緊密な関係を持つマイクロソフトや、グーグルを選ぶ企業もある。

アマゾンは年次ユーザー会議「re:Invent」でこのチップを発表した。同会議は近年、アマゾンが最先端ツールの開発者や、それらへのアクセスに対価を支払う可能性のある企業に働きかけるAIサービスの広告の場となっている。

アマゾン株は2日の取引で一時2.2%上昇後、0.2%高で終了した。エヌビディア株は上げ幅を縮小して0.9%高で取引を終え、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価終値は2.1%安となった。

アマゾンは割安な選択肢を探す企業を引きつけたい考えだ。同社によると、TrainiumはAIモデルの裏側で動く大規模計算をエヌビディアの画像処理半導体(GPU)よりも安価かつ効率的に実行できるという。「Trainiumで適切な価格性能比を得られていることに非常に満足している」とブラウン氏は述べた。

アマゾンがTrainium3を投入するのは、前世代のアクセラレーターを展開してから約1年後で、半導体業界の基準では異例の速さで、こうした迅速な開発サイクルは毎年新型チップを投入すると約束しているエヌビディアのペースにも歩調を合わせるものだ。

現在稼働しているTrainiumの多くはインディアナ、ミシシッピ、ペンシルベニア各州のデータセンターで、AIスタートアップの米アンソロピックが利用できる状態にある。AWSは今年、アンソロピックによる最新モデルの学習を支援するために50万個超のチップを相互接続したと明らかにしており、年末までに100万個を同社向けに割り当てることを目指している。

アマゾンは、アンソロピックの成功と自社のAIサービスをテコに、他の企業を呼び込めると見込んでいる。だがアマゾンはこれまで、このチップの主要顧客をほとんど公表しておらず、アナリストはTrainiumの実効性を評価しにくい状況にある。

アンソロピックはグーグルのAIチップ「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」も使用する。グーグルとは今年、数百億ドル規模のコンピューティング能力へのアクセスを可能にする契約を結んだ。

AWSのマット・ガーマン最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、同社とアンソロピックとの関係は「信じられないほど強い」と述べた。同氏は、アンソロピックが膨大なコンピューティング能力需要を抱えていることで、複数のプロバイダーを利用していると話した。

なお、アマゾンのチップには、顧客がエヌビディアのGPUをすぐに使い始められるよう支援するような充実したソフトウエアライブラリーが欠けている。建設機械を自律的に動かすためAIモデルを活用するベッドロック・ロボティクスは、インフラをAWSのサーバー上で運用している。だが掘削機の操作を支援するモデル構築には、エヌビディアのチップを使っていると、ケビン・ピーターソン最高技術責任者(CTO)は明らかにした。

AWSのマット・ガーマンCEOとのインタビュー

原題:Amazon Rushes Out Latest AI Chip to Take On Nvidia, Google (2)(抜粋)

--取材協力:Edward Ludlow.

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