(ブルームバーグ):人工知能(AI)の職場での活用を促進するには、ボーナス支給が従業員の動機付けとして有効だと考える企業が増えている。
仏製薬大手サノフィや米IBM、フィンテック企業の米ブレックスなどは、社内でのAI活用を拡大しようと、現金の支給やポイント付与、グッズ配布などの施策を打ち出した。
企業がAIシステムに多額の投資を進める一方で、それを利用する側では課題が顕在化している。従業員の一部はAIの利用に消極的で、AI導入が雇用喪失につながるとの不安も根強い。AIの活用方法を共有せず、自身の優位性を保とうとする動きもみられる。
英国の法律事務所シュースミスは、ボーナス制度で対応を進めている。同社は今年4月、マイクロソフトの「Copilot」を2025年度中に計100万回利用することを条件に、総額100万ポンド(約2億円)のボーナスを従業員に分配するとした。経営陣は、約1300人の従業員が1日に4回ずつCopilotを使えば、目標達成は十分可能とみている。
シュースミスでAI活用を主導する幹部のトニー・ランドル氏は「AIを危険な存在ではなく、まず使うべき道具だと従業員が認識するようになれば、どの場面でどう活用するかを見極められるようになる」と語る。
AIの革新的な活用を後押ししようと、現金による奨励策を打ち出す企業もある。サンフランシスコを拠点とするブレックスでは、業務フローの大幅な見直しといったAI関連のプロジェクト225件余りに一時金を支給したと、カミラ・マティアス・モライス最高執行責任者(COO)が明らかにした。
ブレックスでの支給額は、小規模な取り組みで150ドル、影響が大きい案件では数千ドルに上る。これまでで最大級の支給を受けたのは、従来4人が数日かけて対応していた業務を5分足らずで処理できる作業へと短縮したプロジェクトだという。
AI活用を促す報奨は、現金以外の形でも提供されている。IBMが毎年開催するAIイノベーションコンテストの受賞者には「ブルーポイント」が付与され、家電や電子機器、コンサートチケットなどと交換できる仕組みだ。
幅広い企業向けに従業員報奨プログラムを提供するワークヒューマンは、サノフィを含む顧客企業の制度運営を支援している。同社のエリック・モズリー最高経営責任者(CEO)によると、サノフィではAIを活用する従業員にポイントを付与する取り組みがあり、そのポイントはグッズやギフトカードと交換できるという。
サノフィでこうした取り組みを統括するラジ・ベルマ氏は「AIを試し、学んだことを共有する人を報いることで、AIを脅威ではなくチャンスとして受け止める企業文化を築いている」と述べた。
原題:Bosses Try Bonus Pools, Spot Cash Awards to Get Workers Using AI(抜粋)
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