プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。

ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設などがドローンとミサイルの攻撃を受けており、戦争の身近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。

前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼や鉱業、エネルギー産業も苦境に陥り、経済の成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。

苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする。

米ロ首脳会談でアラスカ州を訪れたロシアのプーチン大統領(8月15日)

トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指し圧力を強めている。一方で米ロは水面下で、ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を交渉していたことが明らかになっている。

米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブーエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアにとって最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるようになるには、崖っぷちに立たされているとの認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した。

こうした崖っぷち意識がない中で、ロシア国民にとって事態はいっそう悪化しそうな様子だ。

モスクワ州でイベント会社のマネジャーを務めるエレーナさん(27)は「物価の上昇スピードが賃金の伸びを上回るようになった」ため、消費行動を変えたと話す。衣服の購入は控え、輸入品は高過ぎるため国産品を選ぶようになったという。ブルームバーグはこの報道で個人が報復される事態を避けるため、エレーナさんの姓は公表しない。

この状況は、軍事関連投資で経済が活況を呈した戦争初期とは対照的だ。ロシアの平均賃金は2024年におよそ20%上昇し、消費者の需要は拡大。一方でインフレも押し上げた。

ロシア中央銀行はインフレと景気の過熱を抑えようと、昨年10月に政策金利を過去最高の21%に引き上げた。金利はその後引き下げられたものの、金融引き締めの衝撃が経済に遅れて表れるとともに、戦時経済に移行した国で民間部門を支え続けるという構造的なゆがみも露呈した。

統計で発表されたインフレ率は11月初めに6.8%前後へと低下したが、この主因は消費者の需要後退だと、ベロウソフ国防相の兄弟が責任者を務めるマクロ経済分析・短期予測センター(CAMAC)は最近のリポートで指摘。リアルタイムで収入や消費、経済活動の動きを追跡調査する国営大手銀行ズベルバンクのオープンデータプラットフォーム、ズベルインデックスによると、ロシア人は特に食料支出を削っている。

ロシア中部タンボフ出身でマネジャー職のデニス氏(40)は、「過去数年で週平均の食費は2倍以上になった」と漏らした。一家でやむなく支出を見直し、果物や野菜の購入を減らしているという。

ロシア経済紙コメルサントの分析によると、牛乳や豚肉、そば粉、米の売り上げは9月と10月に8-10%減少した。同国最大の食品小売りチェーンであるX5グループは、インフレによる押し上げで7-9月(第3四半期)の売上高が増えたが、需要低下とコスト増で純利益は約20%減少した。

 

同国の小売業界は荒波にさらされている。7-9月にほぼ毎秒に1店のペースで小売店が閉店し、そのうちの45%をファッション関連の店舗が占めたと、現地メディアは報じた。政府紙ロシースカヤ・ガゼータによると、家電市場は過去30年で最大の需要の落ち込みを経験している。高額商品を買い控える動きが出ているためだという。

新車販売台数も今年1-9月で前年同期比23%減。高金利に加え、政府が歳入を押し上げようと増税したため、輸入車や電気自動車(EV)を中心に価格が上昇し、需要を冷え込ませている。

そこにウクライナの攻撃による直接的な衝撃が加わる。ウクライナ軍のドローン(無人機)はいまや黒海からバルト海沿岸に至るまでのロシアの港湾や製油所をほとんど思うがままに攻撃し、国境から2000マイル(約3200キロメートル)離れたシベリアの標的を攻撃した例もある。

こうした攻撃はロシア国内の燃料危機を悪化させ、8月末以降に価格は急騰した。ガソリン価格は11月にやや下落したが、それでも高止まりし、供給不足が続いている地方もある。

半分以上の業界で生産減少

アナリストの多くは今年と来年の小幅なプラス成長を引き続き予想している。だが、モスクワを拠点とするシンクタンク、戦略研究センターは18日、国内の半分以上の業界で生産が減少していると指摘し、「景気後退(リセッション)を回避できる可能性はほとんど残されていない」との見解を示した。

ロシア財務省のデータを基にブルームバーグが試算したところによると、国庫にとって極めて重要な石油・ガス収入は1-10月に前年同期比で2割強減少して7兆5000億ルーブル(約14兆9000億円)に落ち込んだ。原油安と制裁、ルーブル高が響き、バレル当たりの販売収入が減少している。

しかも、これは米国が10月にロシア石油大手のロスネフチ、ルクオイルの2社を制裁対象とする前の数字だ。11月前半のロシアの燃料出荷はウクライナ侵攻後最低だった。また、ロシアは侵攻開始後に活発化した中国との貿易も減少に転じた。

モスクワ大学経済政策研究センターの責任者、オレグ・ブクレミシェフ氏は「ロシア経済の抵抗力は著しく弱まった」と述べ、「体制全体に響くような危機が来年には起きないかもしれないが、経済状況は着実に悪化し続けるだろう」と論じた。

財政赤字が拡大する中で、政府はコストの高い国内市場での債券発行を増やしている。財務省は初の人民元建て国債を国内市場で発行する計画で、12月2日に注文の受け付けを開始する。

原題:Russians Are Now Feeling Real Economic Pain From Putin’s War(抜粋)

(第7段落以降に情報を加えます)

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