(ブルームバーグ):フィットネス機器を展開する米ペロトン・インタラクティブが10月に発売開始した人工知能(AI)搭載の新たな製品シリーズは、これまでのところ好調なスタートを切ったとは言えそうにない。
米国内で実店舗を展開するペロトンの主要な販売代理店2社の数十店舗に対しブルームバーグが聞き取りをしたところ、高価格帯のランニングマシンやフィットネスバイクに興味を持つ来店者は増えているものの、実際の販売にはあまり結び付いていないのが現状だ。
一方、事情に詳しい関係者によると、ペロトンは年末商戦を通じて販売が加速すると見込む。すでに開始されているブラックフライデーの販促キャンペーンでは、ランニングマシンとアクセサリーのセットが最大で1500ドル(約23万4000円)値引きされている。貿易データなどを提供するインポートジニアスによれば、ペロトンは想定される需要に向け、米国外で製造されている製品の輸入量をここ数年で最大規模に増やしている。

ペロトンの広報担当者はコメントを控えた。同社株価は25日、一時下落する場面もあったが、終値は前日比2.1%高だった。ただ、年初からの下落率は約23%と振るわない。
新型コロナウイルス禍の後、人々が屋外やジムに戻ったことから、ペロトンの販売は低迷が続く。新シリーズにはトレーニングプランを提供するAIプラットフォームが搭載されるなど機能面こそアップグレードされたが、トレーニング機器で約11%、サブスクリプション料金で約19%の値上げ「ショック」は大きい。アナリストらは新規ユーザー獲得の意欲が損なわれる可能性があることを懸念していた。現在の経済状況下だとそうした懸念はさらに強い。
11月第2週時点で、新シリーズのフィットネスバイクのプレミアムモデルをアマゾンの商品ページでみると、過去1カ月の購入者は約50人にとどまる。事情に詳しい関係者によれば、同期間のペロトンの倉庫からの出荷も鈍かった。
とはいえ、ブラックフライデーの販促開始以降、アマゾンの販売数が100件を超えるなど、明るい兆しも見られる。UBSによれば、10月のペロトン公式サイト訪問者数は前年比ほぼ横ばいとなり、9月の同18%減から回復した。ペロトンは10-12月期の売上高を6億6500万-6億8500万ドルと、前年同期比でほぼ横ばいを見込んでいる。
グローバルデータのマネジングディレクター、ニール・サンダース氏は、多くの家計が圧迫され、節約や値引きに注目が集まっているとした上で、「ペロトンが抱える問題は変わらない。価格が高いため、多くの消費者はより安価なブランドを選ぶ傾向にある」と述べた。さらに「AIという付加価値が一般の消費者にどれほど響くかは疑問だ」と続けた。
ペロトンの最高経営責任者(CEO)として今年から再建を任された元アップル幹部のピーター・スターン氏は、今月の決算説明会で、AIを活用したトレーニング支援プラットフォームの認知度を高めるためにマーケティング費用を増やす方針を明らかにしている。
原題:Peloton’s New AI-Powered Bikes, Treadmills Get Off to Slow Start (2)(抜粋)
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