欧州経済は人工知能(AI)を積極的に受け入れ、その普及を妨げる障害を取り除くべきだと欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が呼びかけた。そうしなければ、AIがもたらす利益を逃すリスクがあるとも警告した。

同総裁はスロバキアのブラチスラバで24日に開かれた会議で、一部のECB当局者がAI関連企業の高いバリュエーションに懸念を示す中で、景気循環を伴う投資ブームは珍しいことではないと指摘し、より広い視点で見る必要があると強調した。

ラガルド総裁

ラガルド総裁は過去のイノベーション(技術革新)よりも早い段階で実体経済へのAIの効果が表れている証拠に触れ、「私が考えるように、われわれがそうした道を進んでいるのだとすれば、欧州はそれにふさわしい立ち位置を確立する必要がある」と主張。

「この変革の受け入れを妨げるあらゆる障害を取り除かなければならない。そうしなければ、AI導入の波を見過ごし、欧州の将来を危うくすることになりかねない」と述べた。

同総裁の発言は、世界の各中銀がAIの経済的影響にどう向き合うかを模索している現状を浮き彫りにしている。米連邦準備制度の当局者もAIの変革的な力については見方が一致しているが、その影響の顕在化については判断を留保している。

欧州では、経済成長をどう回復させるかという議論とも関わる。ECBのドラギ前総裁が2024年にまとめた報告書では、生産性の伸びが遅れた主因として、欧州が最初のデジタル革命を十分に活用できなかった点を挙げていた。

ラガルド総裁は同じ過ちを欧州連合(EU)は繰り返すべきではないと訴え、米国や中国がイノベーションを先導しているとしても、AIを速やかに導入し、賢く活用することで「後発であることを競争上の優位性に変えることができる」との考えを示した。

原題:ECB’s Lagarde Says Embracing AI Can Still Give Europe an Edge(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.