20日の米株式市場で見られた急激な反転は、エヌビディアの好決算にもかかわらず、投資家がリスク選好の「安全宣言」を得られなかったことを浮き彫りにしたと、ゴールドマン・サックス・グループのパートナー、ジョン・フラッド氏はみている。

米国株は取引開始直後に上昇したが、その勢いはすぐに失速。S&P500種株価指数は寄り付きから1時間で1.9%高となった後、午後1時までには1.1%安へと転じた。

日中の値動きとしては4月の市場混乱以来最大で、この日のピークから2兆ドル(約315兆円)余りの時価総額が消失。終値は数カ月ぶりに100日移動平均を下回った。米国株の恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は26を超えた。

この急反落は、人工知能(AI)ブームをけん引するエヌビディアの決算が良かったにもかかわらず発生し、市場参加者はその理由を探っている。

混在した雇用統計を受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地への懐疑や過熱した株価バリュエーションへの警戒、あるいは短期筋によるテクニカル要因の売り継続など、複数の見方が浮上した。

フラッド氏は顧客向けリポートで、「今は市場に多くの傷痕が残っている」とし、「投資家は集中リスクのヘッジに極めて敏感になっており、損益保全モードに入っている」と分析した。

ゴールドマンのトレーディング部門によると、マクロ関連商品で空売りが増加しており、上場投資信託(ETF)やカスタムバスケット、先物などで売りが活発化した。

また流動性の低下も指摘されており、S&P500種のオーダーブック上位の厚みは500万ドル足らずと、1年平均の1150万ドルを大きく下回った。こうした要因が株価変動を増幅させている可能性がある。

フラッド氏によれば、1957年以降、S&P500種が1%余り上昇して寄り付きながら、下落して引けたケースは今回を含めて8回あるという。ただし過去の平均的なパフォーマンスは明るく、こうした急反転の後、翌日と翌週はいずれも少なくとも2.3%上昇し、翌月には4.7%上昇していた。

「この種の反転局面は、投資家にポジションを見直させる契機になる」と同氏は呼びかけている。

原題:Goldman’s Flood Sees ‘Extreme’ Focus on Hedging Driving Selloff(抜粋)

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