漢族への同化政策を強いる中国と民族の多様性を尊重する台湾
今、中国ではチベットやウイグル、モンゴルなど少数民族の子どもに対し、中国語教育を強化することで中国の9割を占める漢族との同化政策を強いる動きが加速しています。結果、少数民族が母語を学ぶ機会は少なくなり、中国語のほうが得意な子どもたちが多数生まれています。
手間と時間、そしてお金がかかっても一人一人に母語を学ぶ機会を保障する台湾の取り組みは、中国と全く対照的なものです。
この点についてどう思うのか。少数言語教育を推進するプロジェクトメンバーの張嘉芬校長に尋ねると、言葉を選びながら次のような見方を示しました。

張嘉芬校長
「ひとつの言葉が消えるということは、ひとつの民族が消滅することを意味すると考えています。言葉は自らの歴史的ルーツに対する認識につながります。地球上のすべての言葉の多様性を維持するために、みんなが努力することを願ってやみません」
「台湾もかつては、ひとつの言葉しか使えない時期がありました。しかしもともと台湾は多くの言葉が共存する場所だったのです。商談の場で、それぞれが自分の言葉で話して、それでもきちんと取引が成立していたのです。家庭の中に違う言葉を話す家族がいてもお互いに理解しあえていました。それは自分自身の文化や民族の存在価値を示すとともに、お互いを認め合い、称え合い、ともに栄えるという素晴らしい光景だったと思います。これから少しずつ台湾にあの素晴らしい光景が戻ってくることを心から願っています」
国連の調査によりますと世界にある約7000の言葉のうち、2500あまりが消滅の危機にあるといいます。
言葉が失われる。それは文字だけでなく、文化や習慣、家族のルーツさえも失うことを意味します。台湾の取り組みは、言葉を保存することの難しさと大切さを教えてくれます。
取材 JNN北京支局長 立山芽以子
撮影 JNN北京支局 室谷陽太