(ブルームバーグ):決済処理ネットワークを運営する米ビザとマスターカードは、一部の手数料を引き下げ、加盟店が特定のカード受け入れを拒否する裁量を認めることで合意した。
この和解案は、20年越しの訴訟に終止符を打つ狙いがあり、最終的に加盟店側に計2000億ドル(約30兆8000億円)超の節約効果をもたらす可能性があると、加盟店側の専門エコノミスト、ジョセフ・スティグリッツ、キース・レフラー両氏が指摘した。米国の反トラスト法(独占禁止法)訴訟としては、集団訴訟で過去最大級の和解となる見通しだ。
両社はこれまで物議を醸してきた「全カード受け入れ」規則の緩和に同意した。この規則では、加盟店がビザやマスターカードのクレジットカードを受け入れる場合、そのブランドの全カードを受け入れることを義務づけていた。手数料が高額なプレミアムカードの普及に伴い、このルールに対する加盟店の不満が高まっていた。
加盟店は今後、プレミアムカードを受け入れるか選択できるようになる。
今回の合意は全米の決済処理に多大な影響を及ぼす可能性がある。例えばJPモルガン・チェースの「フリーダム・アンリミテッド」カードなら購入できるが、同社の「ビザ・インフィニット(Visa Infinite)」ブランドのカード「サファイア・リザーブ」は、店舗によって決済を拒否される見通し。
キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズ(KBW)のアナリスト、サンジェイ・サクラニ氏は顧客向けリポートで「今回の提案はネットワーク側の大幅な譲歩を意味し、とりわけ『全カード受け入れ』規則変更はそうだ」とした上で「ただ顧客体験や売り上げへの影響を考慮すると、実際に特定のカードを拒否する加盟店は少ないとみている」とした。
ビザは声明で「20年以上に及ぶ訴訟を経て、ビザとマスターカードは米国内のあらゆる規模の加盟店と和解案に達した。これにより、実質的な負担軽減と柔軟性拡大、支払い受け入れ方法の選択肢を提供することになる」と述べた。
新たな合意では、加盟店がマスターカードやビザの利用者に対してサーチャージ(追加手数料)を課すことが認められる。
さらに両社は、米国内のクレジットカード取引において、「インターチェンジフィー」の平均実効レートを5年間にわたり10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げることにも同意した。インターチェンジフィーとは、加盟店と契約する金融機関などがカード利用者のカード発行会社に支払う手数料を指す。また標準的な米消費者向けカードのインターチェンジフィー料率上限は125bpとなる。
原題:Visa, Mastercard to Cut Fees, Let Retailers Reject Certain Cards(抜粋)
--取材協力:Patricia Hurtado.
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