暗号資産(仮想通貨)を株式市場で取引できる形に変え、それをイノベーションと称し、波に乗る。単純な仕組みだったが、今では通用しなくなっている。

今週、ハイテク株の売りに合わせて暗号資産も崩れ始め、ブームの波は急速にしぼみつつある。トランプ米大統領の盟友デービッド・ベイリー氏やイーサリアム強気派のトム・リー氏、ビットコイン伝道者マイケル・セイラー氏ら暗号資産を後押ししてきた一部の大物も、対応を迫られている。

ビットコイン価格が6月以降で初めて10万ドルを割り込んだことで、暗号資産の購入を続ける「デジタル資産トレジャリー(DAT)」企業の株式に売り圧力が強まっている。DAT企業が保有するトークンの平均価値は急減し、今や株式時価総額と負債の総額にほぼ等しくなっている。

メタプラネット、カインドリーMD、ストラテジーといった公開企業を通じて暗号資産に間接投資していた個人投資家も、今回の売りが始まる前の段階で、数十億ドル規模の損失を被っている。

DAT企業の乱立に加え、個人・機関投資家の買い意欲後退、短期投資家の資金が他の市場に流れる動きが進み、今年の暗号資産ラリーを支えていた好循環は崩れつつある。DAT企業は本来、相場の下支え役だったはずだが、一部のDATは保有していたトークンの売りに転じ、下落圧力を強めている。

DAT企業はこのモデルを機能させるため、カリスマ経営者を前面に出し、株式・社債発行を通じてビットコインやイーサ、ソラナを購入してきた。

暗号資産マーケットメーカー、GSRの共同創業者で共同CEOを務めたリッチ・ローゼンブラム氏は、これら経営者が作り上げた商品は「経営者が見せる自信に、企業の実力と同じくらい依存している。こうした仕掛けが崩れ、市場が疑念を持ち始めると、自信で成り立つ構図は一気に逆回転する」と述べた。

 

暗号資産業界でトランプ氏に影響力を持つとされたベイリー氏は今春、こうした取引を通じてネット上で一躍注目を浴びた。同氏が率いるビットコイン購入企業ナカモト・ホールディングスは5月に医療サービス会社カインドリーMDと合併した後、株価が一時35ドルに急伸したが、現在は1ドルを下回っている。

デービッド・ベイリー氏

ウォール街のストラテジストだったリー氏は、セイラー氏のビットコイン集中投資戦略をモデルにビットマイン・イマージョン・テクノロジーズを設立した。同社は340万イーサを平均約4000ドルで取得したが、10xリサーチによれば、現在約13億ドル(約2000億円)の含み損を抱えている。

DATモデルを考案したセイラー氏自身も逆風に直面している。ストラテジーの株価は、7月半ばに付けた年初来高値から46%下落。純資産価値(NAV)に対する高いプレミアムもほぼ消失した。購入資金の原資を確保するため海外での資金調達に目を向けるセイラー氏は、新たなユーロ建て優先株で高い配当利回りを提示している。

 

原題:Crypto’s Big-Money Backers Hit Hard as Stock Premiums Plunge(抜粋)

--取材協力:Olga Kharif、Dave Liedtka.

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