「脱炭素」の切り札である洋上風力発電ですが、企業の撤退によっていま、危機に瀕しています。政府は再公募に動いていますが、持続可能な「再生エネルギー事業」のためには一体何が必要なのでしょうか?
大海原に並び立つ風車。再生可能エネルギーの「切り札」として政府が期待を寄せる風力発電。政府は2040年には日本の再生エネルギーのうち、最大8%の電力を風力発電でまかなおうと計画していました。
しかし…
三菱商事 中西勝也 社長
「再生可能エネルギーが今のコスト高を受けて、相応に安価ではなくなってきている」
きょうの決算会見で三菱商事の中西社長は、再生エネルギー事業を安くしていくのは難しいとの認識を示しました。
今年8月、洋上風力発電の第1期の事業で、三菱商事と中部電力はまさかの撤退を表明。資材や人件費などで想定の2倍以上のコストがかさみ、採算がとれないからと撤退の理由を説明しました。
再生可能エネルギーの未来が揺らぎかねない事態に直面する中、政府は再公募に向けて動き出していますが、撤退の際に指摘された「政府の想定よりもコストがかかった」とされる資材高、人件費の高騰などの問題は残ったまま。
三菱が落札した第1期の後、第2期と第3期の風力発電事業を受注したのは、JERA Nex bp Japan。
山田正人CEOは、現在の再生エネルギーをめぐる状況についてこう話します。
JERA Nex bp Japan 山田正人CEO
「今この事業を続けられるか続けられないかの瀬戸際にあると言っても過言ではないと思う」
「瀬戸際」の理由は三菱商事の撤退の理由と同じ、事業環境の変化、コストの上昇です。
JERA Nex bp Japan 山田正人CEO
「全てのコストがインフレによって上がっている。洋上風力には大きな費用とリスクがかかる。投資負担とリスクを、官民が適切に分担できる制度を作っていただければ」
いま、政府は三菱商事から聞き取りを行い、撤退した理由を検証し、再公募制度の見直しを本格化させる予定です。
来年の早い時期に再公募を実施したい考えですが、どんな制度で入札が行われるのか、いまだに明らかになっていません。
JERA Nex bp Japan 山田正人CEO
「洋上風力は日本の国にとって悲願の国産のエネルギー。再生可能エネルギーの電気を買っていただく方にも、インセンティブを与えてもらう。そういったサポートが必要だと」
条件が合うならば、再公募への入札も検討すると答えた山田CEO。
「脱炭素」を進めるなかで欠かせない風力発電ですが、持続可能にするため、どんな制度が必要なのか。政府が示す道筋が今後、試されてきます。
    マンション転売で数千万円の“手付金没収”も 不動産各社で広がる転売対策