31日の日本市場では株式が大幅高。国内外の良好な企業決算を追い風に日経平均株価は1000円超上昇し、初の5万2000円台に乗せた。

債券は、堅調な入札結果を背景に2年債が上昇(利回りは低下)した。円相場は対ドルで2月以来の安値圏で推移。東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が上振れたことで買いが先行したが、その後154円台前半に戻した。

株式市場ではアップルやアマゾン・ドット・コムなど米大型テクノロジー企業の決算を好感し、リスク選好の動きが広がった。好決算を発表した日立製作所や村田製作所が大幅高となり、相場を押し上げた。東証株価指数(TOPIX)も最高値を更新した。

高市早苗新政権への期待や人工知能(AI)関連銘柄の急騰を背景に、日経平均の10月の月間上昇率は17%と1990年10月以来の大きさとなった。フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、米ハイテク株と日本企業の好決算の「ダブル効果」で日経平均は5万2000円を超えたと指摘。ただ、企業決算の発表が一巡し、衆院予算委員会が始まれば、11月には「期待で買われている部分は多少剝げる」とみている。

株式

株式市場は、ソシオネクストやアドバンテスト、ソフトバンクグループなどAI関連株が再び相場を押し上げた。半面、今期営業損失が2750億円と予想した日産自動車、決算が失望されたオリエンタルランドは安い。

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、米アマゾンなど大きな投資を行っているAI関連企業の業績がしっかりしていることは、市場の過剰投資懸念を和らげると指摘。国内企業決算も四半期ベースで増収増益と、これまでのところまずまずの内容だと話した。

大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、31日付けのリポートで7-9 月期決算を発表したTOPIX採用企業のうち半数以上がコンセンサス予想を上回ったと指摘した。製造業が非製造業に比べて上振れした比率が高く、米関税や円高に対する懸念から業績に悲観的になり過ぎていた可能性があると分析した。

債券

債券は日本銀行が利上げに慎重との見方を背景に2年債が上昇。この日行われた2年利付国債入札が好調だったことも支えとなり、午後に一段高となった。一方、米長期金利の上昇や朝方発表された東京CPIの伸びが予想を上回ったことを受けて、長期債や超長期債は売りが優勢だった。

2年利付国債入札は投資家需要の強弱を反映する応札倍率が4.35倍と、過去12カ月平均の3.7倍と前回結果の2.81倍を上回った。最低落札価格は100円13銭と市場予想を上回り、小さいほど入札の好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)も2厘と前回の入札から縮小した。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「応札倍率、最低落札価格、テールのどれをとっても強い結果だった」と話した。前日の日銀の金融政策決定会合と植田和男総裁の会見が「ハト派と受け止められたことから買い安心感が生まれた」と指摘。12月の利上げの可能性は残っているが、「政策金利が1%に達した後の利上げは慎重だろうという見方が多く、0.9%台の利回りで需要があった」と言う。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は東京CPIを受けて、朝方に一時153円台後半まで上昇。前日の日銀の金融政策決定で早期利上げの示唆がほとんどなかったとの受け止めから、海外時間に2月以来となる154円台半ばまで下落した反動も出た。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、片山さつき財務相から円安進行に対するけん制発言が出ており、「政府サイドとしても過度な円安を避けたいとみている」と指摘。ドル・円の「154円台は重くなる」との見方を示した。

一方、SBI FXトレードの上田真理人取締役は、東京CPIについて「植田日銀総裁がきのうの会見で年内利上げを示唆していたら、もっと強い買い材料になっただろう」と話した。実際、円買いは続かず、欧州市場に向けて円は売り優勢に転じた。

--取材協力:長谷川敏郎、山中英典、日高正裕.

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