米連邦準備制度理事会(FRB)は、米国の金融システムの枠組みを再定義する可能性のある大きな転換について検討している。

現在検討中の提案には、これまで銀行だけに認められてきた中央銀行の中核的な決済インフラへの直接アクセスを、フィンテック大手に一部許可することが含まれている。

ウォラーFRB理事は、法的に適格とされる事業者が利用できる「スキニー(skinny)」マスター口座のモデルを検討するよう職員に指示した。これは、銀行がFRBの決済システムを通じて日々数兆ドルを動かすために使う口座の簡略版に当たる。この口座は、利息の付与や当座貸し越しの利用、窓口貸出制度からの借り入れなどはできない。

ウォラー氏の案は、特定のフィンテック企業に対し、制限付きながら金融システム中枢への直接的なアクセスを認めるものだ。

クラロス・グループの上級ディレクターで、FRBでイノベーション政策アナリストを務めたローマン・ゴールドスタイン氏は、ウォラー理事は「認可を受けた新しい形態の金融機関に決済ネットワークへのアクセスを与えようとしているが、同時にFRBが暗黙的にも明示的にも救済責任を負うことにはならないようにしている」と指摘した。

サークル・インターネット・グループやストライプのようなフィンテック企業は、顧客からの預かり資産を直接FRBに保管し、商業銀行を介さずに資金の流れを管理できるようになる可能性がある。これによりコスト削減やカウンターパーティーリスクの低減化、資金管理の精度向上が見込まれる。

ウォラー氏は21日に首都ワシントンで開かれた会議で「要するに私の見方では、決済の仕組みやサービス提供者のタイプは近年劇的に変化しており、それに応じた新たな形の決済口座は、この現実をより正確に反映できる」と説明した。

ウォラーFRB理事

フィンテック企業の裏方として決済インフラや銀行免許を提供する「スポンサー銀行」は、フィンテック企業のバックエンド業務を担うことで収益性の高いビジネスを築いてきたため、今回の動きによって主要な収入源を失う可能性がある。

今回の動きは同時に、フィンテック企業と銀行のビジネスモデルが急速に融合しつつある中、フィンテック企業を規制下の銀行により近い存在として扱う方向へと踏み出す静かだが重要な一歩となりそうだ。

原題:Fintechs Are Edging Closer to Banking’s Big Payments Privilege(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.