(ブルームバーグ):米金融当局が29日まで開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、0.25ポイントの追加利下げが見込まれる。
一方で、当局者の間の見解の相違を背景に政策金利の道筋が見通せないことで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が踏み込んだガイダンスを示すことはないと予想される。
パウエル議長は14日、FOMCとして引き続き労働市場悪化の可能性を注視していることを示唆。その後に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回る伸びにとどまり、対インフレ強硬派の動きは当面、収まることになりそうだ。
エバコアISIのグローバル政策・中央銀行戦略責任者、クリシュナ・グハ氏は「労働市場のデータが議論の中でますます重要な役割を果たしている」と指摘。金融当局がインフレ期待や賃金・サービス分野からの物価圧力の水準に安心を抱く限り、パウエル議長は雇用に焦点を合わせつつ、「中立的な政策スタンスに戻す」ことに専念できると話した。
FOMCの政策金利決定と声明は米東部時間29日午後2時(日本時間30日午前3時)に発表される。パウエル議長は2時半から記者会見の予定。今回の会合では、新たな経済見通しや金利見通しの公表はない。
フェデラルファンド(FF)金利先物の動向に基づけば、投資家は0.25ポイントの利下げをほぼ確実視している。
ただ、利下げの可能性が高いとはいえ、当局者の見解が一致しているわけではない。少数派ながらも相当数の当局者が労働市場へのリスクを認めつつも、インフレへの懸念を引き続き表明している。
9月のCPIは予想を下回る伸びにとどまったものの、インフレの基調を示す一段と重要な指標とされるコアCPIは前年同月比3%上昇し、2%の物価目標を1ポイント上回った。
一部の当局者は、関税の影響を受けにくいはずのサービスなどで依然として根強い物価上昇が続いている点も指摘している。さらに、カナダなどに対する新たな関税措置の脅威が浮上し、物価や経済見通しに新たな不確実性をもたらしている。
この結果、FOMC内の見解の相違は、今年に入って初めての利下げを決めた9月時点よりも、さらに深まる可能性がある。
こうした状況を踏まえ、パウエル議長は今後の会合に関する明確な見通しを示すことを避けるとの見方がアナリストの間で広がっている。連邦政府機関の閉鎖が続き、経済指標の公表が滞っていることも、議長が一層慎重になる要因となりそうだ。
ドイツ銀行の米国担当チーフエコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は「最終的には今後発表されるデータが、委員会内の二つの陣営の溝を埋める助けになることが期待されている」と語った。ただ、意見の対立が続く限り、パウエル議長は「12月以降の方針についてほとんどシグナルを発しないだろう」とも論じた。
トランプ大統領が起用したマイランFRB理事は、0.5ポイントの利下げを主張し、再び反対票を投じる姿勢を示している。一方、残る投票メンバーの中ではカンザスシティー連銀のシュミッド総裁が、金利据え置きを支持して反対票を投じる可能性があるとみられている。
バランスシート
FRBウオッチャーの間では、FOMCが今回の会合で6兆6000億ドルのバランスシートについて、米国債のランオフ(償還に伴う保有証券減少)を停止する可能性が高まっているとの見方が浮上している。当局者は過去数カ月、翌日物資金市場の流動性を過度に損なわない範囲で、できる限りポートフォリオを圧縮する方針を続けてきた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は「FOMCは10月28、29両日の会合で0.25ポイントの利下げを実施する見通しだ。ただし、量的引き締め(QT)の終了を同時に発表するかどうかは不透明だ。BEとしてはFOMCが11月をもってQTの終了を発表すると予想している」とコメントした。
パウエル議長は14日、数カ月以内にバランスシートの縮小を停止する可能性があると示唆した。しかし、ここ数週間で短期金融市場にはストレスの兆しが顕在化している。
BNPパリバの米金利戦略責任者、グニート・ディングラ氏は「現時点ではボラティリティーとストレスの境界線上で少し危うい綱渡りをしている」とし、リスク管理の観点から見れば、ランオフ終了を「真剣に検討する必要性が非常に明確に示されている」と語った。
原題:Fed to Cut Rates, But With No Added Signal: Decision-Day Guide(抜粋)
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