電気自動車(EV)メーカーの米テスラは、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する総額1兆ドル(約152兆円)の報酬案が株主によって否決され、同氏が退社する場合、社内から新CEOを指名する公算が大きい。同社のロビン・デンホルム会長が明らかにした。

デンホルム氏は28日に行われたブルームバーグとのインタビューで、「秩序立った移行」を確保するためには、「最も可能性が高いのは内部」からの登用だろうと述べた。ただ、社外の候補を起用する可能性も排除しなかった。

マスク氏は10年以上にわたりテスラとは切っても切れない存在であり続けてきたが、来週予定される重要な株主投票を前に、退任の可能性が注目されている。

報酬案が承認され、テスラの時価総額や販売台数、ロボティクス、ロボタクシー事業の成長目標が達成されれば、マスク氏は同社株の25%を得ることができる。一方、報酬案が承認されず議決権の拡大が得られない場合、マスク氏はテスラを退社するか、xAIやスペースXなど自身の他事業に関心を傾けると警告している。

デンホルム氏は「自分はマスク氏と直接話をしている」と述べ、報酬案が承認されなければ、同氏が会社から身を引く、あるいは関与を薄める「可能性が高いという点について、自分の中に疑いはない」と続けた。

動画:ブルームバーグテレビジョンとのインタビューに応じるテスラのロビン・デンホルム会長

テスラ幹部はこのところ、前例のない巨額の報酬パッケージに対する支持を集めようと、報道各社とのインタビューや投資家との集会に積極的に応じている。今回のインタビューもその一環だ。報酬案に対する投票は、11月6日の年次株主総会で行われる。

報酬案が否決される兆しはほとんどないが、投資家は土壇場まで判断を保留することも多く、会社としては何事も当然視できないと、デンホルム氏は指摘。テスラ投資家の約3割を個人が占めているため、普段は広報に消極的な同社も、今回は投票への参加を呼び掛ける必要性を感じたという。

デンホルム氏や取締役のジェームズ・マードック氏、元チポトレ最高財務責任者(CFO)のジャック・ハートゥングらも、テスラの主要機関投資家であるバンガード・グループやブラックロック、ステート・ストリートなどテスラの主要機関投資家との会談を重ねている。

投資家の多くは、ISSやグラス・ルイスといった議決権行使助言会社の判断に従って投票する傾向があるが、両社はそれぞれのリポートで、マスク氏の報酬案に反対票を投じるよう推奨した。

デンホルム氏は「保証はない」とし、議決権行使助言会社の「ガイダンスに従う受け身の投資家が多いため、われわれはそれに直接対抗する必要がある」と語った。

原題:Tesla Eyes Internal CEO Candidates If Musk Leaves Over Pay Vote(抜粋)

--取材協力:Edward Ludlow、Caroline Hyde.

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