(ブルームバーグ):ダイレクトレンディング(直接融資)などを手がけるプライベートクレジット大手が、サウジアラビアでの案件獲得を巡って動き始めている。政府の野心的な経済多角化プロジェクトが銀行システムの流動性を吸い上げ、代替の資金調達手段が求められている。
ゴールドマン・サックス・グループやアポロ・グローバル・マネジメントに加え、政府系ファンド(SWF)や中堅資産運用会社に至るまで、幅広いプレーヤーが参入の機会をうかがっている。サウジではわずか1年前まで、プライベートクレジット市場はほぼ存在していなかった。
資産運用会社SCローウィのオリジネーションおよび中東事業開発責任者デービッド・ベケット氏は、「場合によっては銀行がわれわれに案件を紹介してくる。自ら融資できないためだ。全体として、プライベートクレジットは不可欠だ」と語った。
プライベートクレジット市場は世界的に拡大しているが、サウジでは特に資金需要が強い。現地の銀行が、ムハンマド皇太子が主導する石油依存脱却の経済改革計画「ビジョン2030」の資金調達を支えているためだ。
その結果、銀行は他の企業やプロジェクトへの融資余力が圧迫されている。サウジの中期融資残高は、直近の四半期に3年ぶりに減少した。

今週リヤドで開催されるイベント、「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」サミットでは、プライベートクレジットが主要テーマとなる見通しだ。
参加する金融幹部らは、企業が抱える資金需要の規模や、政府が支出戦略を見直し、イベント関連インフラや住宅など優先度の高い分野に重点を移す中で、ニーズがどう変化するかを議論するとみられる。
流動性の逼迫(ひっぱく)は市場のあらゆる分野で表面化している。地元のある不動産開発会社は最近、銀行融資を断られたと明かし、別の開発会社も少なくとも2行のサウジ系銀行から融資が難しいと伝えられたという。
アブダビ商業銀行(ADCB)のチーフエコノミスト、モニカ・マリク氏は「国内流動性の逼迫が依然として最大の課題であり、信用需要が預金の伸びを上回っている」と指摘した上で、「預金を巡る競争は引き続き激しく、銀行が資金を調達する上で対外借り入れへのアクセスが引き続き重要だ」と述べた。
逼迫は当面続く可能性がある。サウジは観光開発や大規模データセンター建設など、数千億ドル規模の経済多角化プロジェクトを推進しており、多くのサウジ企業が銀行に代わる資金調達手段を模索している。
ゴールドマンの中東・北アフリカ地域エコノミスト、ファルーク・スーサ氏は「国内銀行の流動性制約と資本状況は実際に大きな機会を生み出しており、多くの国際銀行が注目している」と述べ、「プライベートクレジットは新たに開かれた分野だ」と説明した。
原題:Private Credit Titans Eye Opportunity in Saudi Liquidity Squeeze(抜粋)
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