ステーブルコインの規制枠組みを整備する米「ジーニアス(GENIUS)法」が7月に成立して以降、消費者や企業によるドル連動型ステーブルコインを使った購入や決済が急増している。

ステーブルコインはドルなどの法定通貨に価格を連動させたデジタル通貨。ブロックチェーンデータ提供会社アルテミスのリポートによると、8月にステーブルコインを使用した商品・サービス購入と送金は100億ドル(約1兆5300億円)超と、2月の60億ドルから増加。前年同月比で2倍強となった。アルテミスの調査担当者は、このペースが続けば年間で1220億ドルに達する可能性があるとしている。

急成長の背景には、ステーブルコイン発行業者に対する連邦規制を定め、米国債など流動性の高い資産での裏付けを義務づけたジーニアス法の施行がある。

ただ、ステーブルコインによる決済は従来型の決済と比べると依然小規模だ。年間決済額が1220億ドルとなっても全体のごく一部にとどまる。それでも推進派は今後の伸びに楽観的だ。

アルテミスのデータサイエンティスト、アンドリュー・ヴァン・エイケン氏は、ステーブルコイン供給量にはもともと増加傾向があったが、ジーニアス法の成立直後に伸びが加速していると指摘。「上振れの影響があったと確信している」と語った。

 

リポートによると、8月は企業間取引が64億ドルと全体の約3分の2を占め、2月から113%増加した。個人間取引は横ばいの16億ドルだった。

企業は国際送金の遅延を避けるためステーブルコインを活用している。ヴァン・エイケン氏は、企業は「銀行から別の銀行へ、さらに別の銀行へと送る煩雑な手続きにうんざりしている」と述べた。

企業のステーブルコイン決済の平均額は25万ドルとされる。ヴァン・エイケン氏は、特に大規模決済では送金スピードが重要であり、ステーブルコインを使えば複数の銀行を経由する必要がなく、遅延を回避できると説明した。

銀行もステーブルコインに注目している。大手銀行連合が所有する送金サービスのゼル(Zelle)は国際展開を計画しており、親会社のアーリー・ウォーニング・サービシズの資料によると国境を越えた資金移動にステーブルコインを活用する方針だ。

さらにヴァン・エイケン氏は、ステーブルコイン利用者が利回りを得ながら資金を迅速に移動できる点も利点だと指摘。「ステーブルコインがより良い通貨としての地位を証明していくに連れて、人々の信頼は一層高まり、成長が加速するだろう」と述べた。

原題:Stablecoin Use for Payments Jumps 70% Since US Regulation(抜粋)

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