不透明感の残る環境で米国株が売り局面から反発する際、上昇の背後にはしばしば激しい買いが潜んでいる。空売りをしていた投資家が上昇相場に巻き込まれ買い戻しを迫られるショートスクイーズだ。

ゴールドマン・サックス・グループが算出する空売り比率の高い銘柄のバスケットは今月に入って16%上昇し、S&P500種株価指数の上昇率0.7%を大きく上回っている。ブルームバーグが2008年までさかのぼって集計したデータによると、10月として過去最高のペースにある。

この乖離(かいり)は一部投資家が次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)決定を前に空売りの買い戻しを進めていることを示唆している。

こうした急激な買い戻しは市場全体を押し上げる傾向がある一方で、株式市場に偽りの安心感を与えるリスクもある。

現実は、トランプ米大統領の通商政策や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の行方が見通せない不透明感の中にある。

 

ヘッジファンド・テレメトリーの創業者で、S&P500種およびナスダック100指数に小規模なネットショートポジションを持つトーマス・ソーントン氏は「この相場を空売りするのは容易ではない。上昇相場が永遠に終わらないように感じる」と話す。

しかし、デリバティブ市場には変化が見られる。10月に入る前は下落に備えるヘッジよりも急激な上昇に備えるヘッジが買われていたが、CBOEグローバル・マーケッツのデリバティブ市場インテリジェンスチームの20日のリポートによると、トレーダーは上昇に備えるコールオプションを売却して下落に備えるプットオプションを購入している。

10月にはまた、市場の投機色が強いセクターが急上昇している。ゴールドマンが算出する不採算のテクノロジー企業で構成されるバスケットは10月に入り16%上昇。ブルームバーグが2014年までさかのぼって集計したデータによると、こちらも10月としては過去最高のペースだ。

ソーントン氏は「投資家が空売り比率の高い銘柄と相関が強い投機的セクターに資金を投じている」と指摘。「突然売りに転じるリスクはある。何が引き金になるかは誰にも分からないが、起きるかどうか、ではなくいつ起きるか、という問題だ」と語った。

原題:Goldman Basket Shows Painful Month for Shorts Caught in Squeeze(抜粋)

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