米投資銀行ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループ傘下のファンド、ポイント・ボニータ・キャピタルは今年4月の投資家向けレターで、運用成績の「プラス月の割合が100%」と誇っていた。

ブルームバーグが確認した資料によると、ウェルズ・ファーゴで15年勤務したベテランバンカー、ロス・バーガー氏率いるポイント・ボニータは、年7.56-9.38%という極めて着実なリターンを残し、「投資家に安定した高品質のリターンを提供する」という目標を毎月欠かさず達成してきた。

2019年のスタート以降、金融業界で比較的無名の存在だったが、経営破綻した米自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループへの多額のエクスポージャー(リスク債権)で一躍注目を集めた。同社などの突然の破綻を巡り、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、クレジット市場に潜む「ゴキブリ」を「1匹見たら恐らく他にもいる」と警告した。

「非の打ちどころのないリターン」を最近数年享受してきた投資家らは、今や出口に急いでいる。米資産運用会社ブラックロック、モルガン・スタンレーの資産運用部門、シンガポール政府系ファンドも償還を請求した。

ポイント・ボニータは今年4月の投資家向けレターで、「プラスの月の割合が100%」と運用成績を誇っていた

ジェフリーズの広報担当者は、この記事に関するコメントを控えた。ポイント・ボニータを管理するヘッジファンド運営部門ルーカディア・アセット・マネジメントは、ファースト・ブランズ破綻に対処する柔軟性を確保できる形で、償還請求に応じるとジェフリーズは説明している。

投資家への返金は四半期ごと4回に分割し、2026年10月までに行う予定という。

ポイント・ボニータは、企業間取引の資金繰りを支援するトレードファイナンスの出し手であり、約30億ドル(約4550億円)のポートフォリオのうち、ファースト・ブランズ関連が約4分の1を占めた。同社がウォルマートやオートゾーンといった小売業者に販売した商品の売掛金を立て替えるサプライチェーン・ファイナンス契約が含まれる。

ウォルマートなどの顧客が支払うべき売掛債権が複数のファンドに重複して差し入れられていた危険がある。

ジェフリーズ・フィナンシャル・グループ本社(520 マディソンアベニュー)

ファースト・ブランズはローン借り換えに失敗し、不透明な簿外ファイナンスを巡る疑念が高まる中で、9月28日に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。異なる債権者に同一の担保が設定されていなかったか特別委員会が調査を進めている。

ジェフリーズのリチャード・ハンドラー最高経営責任者(CEO)は投資家に対し、「われわれはだまされたと考えている。今回の件が炭鉱のカナリアとは受け止めていない」と強調した。

しかしジェフリーズがポイント・ボニータの投資戦略を十分監視していたか疑念が残る。ウォール街のアナリストは、ポイント・ボニータへの投資で最大4250万ドルの直接的な損失を被る可能性を想定。ハンドラーCEOらは「当社の規模と比較すれば、これらの投資の損失や費用負担は容易に吸収可能」としている。

ファースト・ブランズは、ワイパーブレードやフィルターなど自動車部品のサプライヤーを傘下に置く

バーガー氏に記事に関するコメントを複数回求めたが、これまでのところ返答はない。ファースト・ブランズが破綻に向かっていた9月に連絡が取れたが、「忙しくて話せない」と記者の電話を切った。

原題:Jefferies’ Fund Boasted Perfect Record Before First Brands Crash(抜粋)

(不透明な簿外ファイナンスの詳細などを追加して更新します)

--取材協力:Sridhar Natarajan、Jack Farchy、Erin Ailworth.

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