(ブルームバーグ):日本銀行は、今月の金融政策決定会合で急いで利上げをしなければならない情勢にはないものの、12月を含めた早期利上げの環境が整いつつあるとみている。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、最大のリスク要因である米関税政策の内外経済への影響は、顕在化が後ずれしており、もう少しデータや情報を見極めたいとの声が日銀内にある。米政府機関の閉鎖で米国の実体経済の動向が把握しづらくなる可能性や、関税を巡る米中対立の行方も懸念されるという。
もっとも、こうした材料は現時点で日銀のシナリオに変更を迫るものではなく、新たに示す経済・物価見通しも現行から大きな変化はない見込み。経済・物価は日銀の見通しに沿って推移しており、目標実現の確度は着実に高まっているという。
前回の9月会合で0.5%程度の政策金利維持に反対した高田創、田村直樹両審議委員は、今月の会合で引き続き0.75%程度への利上げを主張する可能性があり、同会合でも利上げの是非が議論される見通しだ。日銀内には、政策委員が利上げという方向性で一致している中で、あとはタイミングの問題だとの声もある。
先行きの不透明感を強める一因となっている日本の政治混乱は、自民党と日本維新の会との新たな連立合意で収束へ向かう可能性がある。21日の首相指名選挙で自民の高市早苗総裁が女性初の首相に選出された。組閣を経て高市内閣が正式に発足する見通し。
関係者によると、日銀は引き続き政府と緊密に連携しつつも、政策判断はあくまで物価目標の達成状況に基づいて行う方針だ。物価高対策を中心とした新政権の具体的な政策と、それが経済・物価や金融市場に及ぼす影響を注視し、政策の具体的な内容が固まっていけば、経済・物価見通しに反映させていく方針だと関係者は語った。
日銀ウオッチャーの多くは、高市氏の首相就任直後に日銀が利上げに踏み切れば、過去に政府との間で生じた利上げを巡る対立が再燃しかねないとして、日銀が慎重になるとみている。
日銀は29、30日の会合で、最高値にある株価や1ドル=150円台の円安基調で推移している為替相場など金融市場の動向、内外の経済・物価情勢を直前まで見極めて利上げの是非を最終判断する。
9月会合後に70%程度に強まった後、政治混乱を受けて足元で20%台に低下していた10月利上げ観測は、ブルムバーグの報道後、11%台(午後2時40分現在)まで下がっている。12月までは約60%、来年1月まででは80%程度となっている。為替はやや円安に振れており、151円台半ばで推移している。
今回公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2025年度の実質国内総生産(GDP)見通しについて、4-6月の成長率が市場予想を上回る中で小幅な上方修正が適切との見方を一部関係者は示している。日銀は前回のリポートで、今年度の成長率を民間予想中央値(0.8%)をやや下回る0.6%と予測した。
(市場の利上げ予想の変化や為替動向を追加して更新しました)
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