(ブルームバーグ):日経平均株価が5万円の大台に近づく中、業種間の株価パフォーマンスの違いが新規株式公開(IPO)市場に影を落としている。
ヘアケア製品などを手掛けるファイントゥデイホールディングスは20日、東京証券取引所への上場を延期すると発表した。事情に詳しい複数の関係者によると、投資家から求められたバリュエーション(株価評価尺度)と会社側の目指す水準に乖離(かいり)があった。ファイントゥデイの担当者は、株主の意向も踏まえて市場動向などを勘案したと説明した。
同社のIPO取りやめは昨年に続き2回目。今回は上場する市場区分をスタンダード市場に変更し、想定時価総額を切り下げて投資家の需要を探った。市場環境の変化による価格変動リスクを軽減する承認前届出書提出(S-1)方式を採用し、案件を取り仕切るジョイント・グローバル・コーディネーターもゴールドマン・サックス証券を筆頭とする新布陣としたものの、上場には至らなかった。
20日はファイントゥデイのほか、スキンケア製品を手掛けるBJCも上場を取りやめた。16日に半導体材料を手掛けるテクセンドフォトマスクが今年2番目のIPO規模で東証に上場したのとは対照的だ。株式市場で業種間の値動きに格差が出る中、IPOでも銘柄選別色を強める投資家の姿が垣間見える。
半導体関連銘柄の好調がけん引し、日経平均は年初来で23%上昇。20日には過去最高値を再び更新した。一方、市場でファイントゥデイの類似企業と見なされる花王やライオンの株価はマイナス圏に沈む。

IPOなどの分析・調査を手がけるエキタス・リサーチのアナリスト、スミート・シン氏によると、ファイントゥデイは自社の企業価値をEBITDA(支払利息・税金・償却・減価償却前利益)の約11倍と見積もっていた。これは同業他社より高い水準だという。
UBPインベストメンツのファンドマネジャー、ズヘール・カーン氏は、パーソナルケア・日用品セクターでは「予想利益率には若干の改善が見られるものの、セクターのファンダメンタルズは全体として優れているとは言えず、魅力的な評価額でのIPOは依然として困難な状況だ」と語る。
こうした環境は、経営権取得を通じて企業価値を高めた上で株式を売却し、リターンの獲得を目指す投資ファンドにとって「難しいジレンマ」をもたらすとカーン氏はみる。「早期のエグジット(資金回収)を選ぶか、それともファンダメンタルズの改善、つまりより有利なIPO環境を待つか」という問いに迫られると指摘した。
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