半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)は16日、2025年の増収率見通しを30%台半ばに引き上げた。世界的な人工知能(AI)投資ブームの持続性に対する期待をさらに高めた。

TSMCは25年の設備投資計画レンジの下限も引き上げ。少なくとも400億米ドル(約6兆円)を投じる方向だ。従来の下限は380億米ドルだった。

同日発表された7-9月(第3四半期)の純利益は前年同期比39%増の4523億台湾ドル(約2兆2300億円)。アナリスト予想平均は4055億台湾ドルだった。

今回の決算は、TSMCが今後1兆ドルを超えると見込まれるAIインフラ投資の恩恵を最も強く受ける企業の一角であることを改めて示した。米OpenAIやオラクルなどテクノロジー企業はポストChatGPT時代を支えるデータセンターの構築を急いでいる。

AIのメガトレンド

TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は16日、半導体業界が地政学的な不確実性に直面しているとの認識を改めて示し、米国による制裁措置が中国へのアクセスを次第に遮断しつつある状況を認めた。

中国政府が多くのテクノロジー製品に不可欠なレアアース輸出を制限し、これに対して米国が対中追加関税やソフトウエア輸出規制の発表で応じたことで、世界の半導体サプライチェーンに関わる企業は今後の混乱に備えている。

だが、魏CEOは旺盛なAI需要がこうして失われた市場を穴埋めするとの見方を示した。「AIのメガトレンドに対する確信は強まっている」と、決算説明後にアナリストらに語り、「AI需要は引き続き非常に強く、3カ月前に想定していたよりさらに強まっている」と述べた。

 

主流となるAIサービスやアプリがなお乏しい中で、こうした投資ラッシュにテクノロジー銘柄のバリュエーション急上昇が重なり、一部ではドットコム・バブルとの類似性も指摘されるようになっている。

TSMCは7月に売上高見通しを引き上げたばかりだ。当時は30%前後の伸びを予想していると説明していたが、今回は30%台半ばの伸びを見込んでいるとした。

TSMCに半導体製造装置を供給する主要企業、ASMLホールディングは15日、AIブームを背景に先端装置の需要が拡大していると明らかにしていた。

TSMCが16日示した10-12月(第4四半期)の売上高見通しは322億-334億米ドル。市場予想は312億3000万米ドルだった。

原題:TSMC Raises Outlook In Vote of Confidence for AI ‘Megatrend’、TSMC Narrows FY Capital Expenditure Forecast (1)(抜粋)

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