(ブルームバーグ):16日の日本市場は株式が続伸。日本維新の会の吉村洋文代表が自民党の高市早苗総裁と連立政権樹立も視野に政策協議を開始することで一致し、政治を巡る不透明感がやや後退した。
政局が安定し日本銀行が利上げに動きやすくなるとの見方から、債券は中期債や先物が下落。円は対ドルで一時150円台半ばまで買われた後、151円台前半に下落した。
アセットマネジメントOneの荻原健エグゼクティブストラテジストは、高市氏が首相になる可能性がかなり高まったと指摘。日本株について、いったん沈静化していた「高市トレード」が戻ってきたとの見方を示した。
株式
東京株式相場は続伸。高市氏の経済政策への期待から、人工知能(AI)関連や防衛関連、原発関連が買われた。米銀行の好決算などを受けて米景気の底堅さが確認され、日本企業の業績を支えるとの見方も相場の追い風になった。
半導体やAI関連を巡っては、前日にオランダの半導体製造装置大手であるASMLホールディングが好調な受注を発表したことや、きょう発表の台湾積体電路製造(TSMC)の純利益が市場予想を上回ったことも追い風になった。
阪急阪神ホールディングスや京阪神ビルディング、大林組など関西で事業を展開する企業の株価も高い。三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは、維新が掲げる「副首都構想」で「関西圏の内需株が恩恵を受ける可能性が意識されやすい」と述べた。
債券
債券相場は中期債や先物が下落。自民・維新の連立協議を受け、政局安定が利上げを後押しするとの見方が出ている。一方、維新が財政拡張の歯止めになるとの見方で超長期債には買いが入り、30年債利回りは午後3時過ぎに約2週間ぶり水準に低下した。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、「自民党と維新の会の連立の可能性が高まり、政治的に安定して日銀が利上げしやすいとの見方から中期債が売られ、国民民主党よりは財政拡張的でないことから超長期ゾーンがフラット(平たん)化している」と述べた。
日銀の田村直樹審議委員は16日、物価の上振れリスクがある中、将来の急激な利上げによるショックを避けるため、「中立金利にもう少し近づけておくべきだ」と述べ、利上げを判断するべき局面に来ているとの見解を示した。
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、田村委員の発言は「タカ派的で変わっておらずサプライズはないものの、改めて利上げの必要性を訴える内容だった」と指摘。今後、内田真一副総裁、高田創審議委員と発言機会が続くことを踏まえ、年内利上げに対するトーンが強まることを警戒して先物、中長期債に売りが出たのではないかと述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
円相場は対ドルで151円台前半に下落。日米両財務相の発言を受けて一時円高に振れた後、自民党と日本維新の会の政策協議をにらみ円を売る動きが出ている。
SBIFXトレードの上田真理人取締役は「両党の連立がまとまる可能性を視野に入れた円売り・ドル買いが出ている」と指摘。ドルは下値が堅く、よほどのことがなければ150円50銭は割れないとみる。一方で、米中貿易摩擦が長引きそうなため、151円台半ばから後半ではドル売りも出そうだと言う。
米ワシントンを訪問中の加藤勝信財務相は15日(現地時間)、足元の為替動向について「円安方向で急激な動きが見られる」とした上で、為替動向や過度な変動についてしっかり見極めるとの考えを改めて示した。ベッセント米財務長官は、日銀が適切な金融政策の運営を継続すれば、円相場は適正な水準に落ち着くとの見解を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:我妻綾.
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