(ブルームバーグ):トヨタ自動車グループによる豊田自動織機への株式公開買い付け(TOB)について、アジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA)は16日、両社の取締役会にさらなる情報の開示や説明を求める書簡を公開した。TOB価格の決定手順や企業価値向上への寄与度が不透明だと主張した。
ACGAは書簡で、今回のTOBでの価格決定プロセスでは豊田織機とトヨタ側の価格交渉の回数が限定的で、内容の開示も不足していると機関投資家への調査などをもとに指摘。一連のスキームは複雑で、豊田織機の非公開化によって生じる価値の配分について少数株主の間で「重大な懸念が生じている」との認識を示した。
その上で、豊田織機に対しては国や東京証券取引所の指針に照らしたTOB価格の算出に関する情報の開示や、同社が保有する有価証券や不動産などの市場価値の反映分などについての説明を求めた。また、独立した専門家を再度任命し、特別委員会を再構成した上で、本件の一連の取引について再検討を行うことも要求した。
トヨタに対しては、トヨタ自身が20%を目安としている株主資本利益率(ROE)目標達成に一連の取引がどのように寄与するか、豊田章男会長が出資することに関する利益相反の可能性をどのように取り扱ったかなどについて説明を要請した。
トヨタの広報担当者は、豊田織機を巡る取引について8月上旬にACGAから書簡を受けて以降、建設的な対話を重ねているとコメント。指摘されている利益相反の管理や、バリュエーションの前提条件などについては既に投資家から問い合わせを受けており、対話を通じて自社の考え方を説明しているとした。さらに、本件の交渉は公正で独立性を確保したプロセスを経て実施され、少数株主の利益にも十分配慮されていると認識していると述べた。

豊田織機の広報担当者は、経営幹部や特別委員会がACGAと対話を重ねているとした上で、価格算定の前提やプロセスの透明性などについても丁寧に説明しており、今後も株主や投資家と真摯な対話を継続していくとした。
1株あたり1万6300円としたTOB価格を巡っては、6月の豊田織機の定時株主総会でも不満の声や妥当性を問う声が上がっていた。アジアを中心に世界の資産運用会社や年金基金などが加盟するACGAの働きかけに、トヨタがどのように対応するかが今後の焦点となる。
トヨタは6月、同社とトヨタグループ各社が、グループの源流である豊田織機をTOB・非公開化することを発表した。TOBは当初は12月上旬に始める予定だったが、開始時期が26年2月以降に延期となると6日に発表していた。国内外の競争法令などに基づく必要な手続きや対応の完了時期が1月中旬以降になることを鑑みたという。
ACGAには、グローバルに活動する運用会社や年金基金など機関投資家を中心とする102の会員企業が参画。その運用資産の合計は40兆ドル(約6000兆円)を超えるとしている。
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