(ブルームバーグ):「ジャックダニエル」を製造する米蒸留酒メーカーのブラウンフォーマンは、世界の酒類業界が課題に直面する中、長期的な成長目標の達成が後ずれするとの見方を示した。
ローソン・ホワイティング最高経営責任者(CEO)は、同社事業を倍増させる長期目標を依然として達成する意向だと述べたが、当初予定していた2032年より1-2年遅れる可能性があると警告した。
ホワイティング氏は15日の投資家向け説明会での質疑応答で、「少なくとも今後数年間は2桁成長できる状態にはない」とし、「依然として会社の規模を倍増させたいが、少し時間がかかるだろう」と述べた。
これを受け、ブラウンフォーマンの株価は15日のニューヨーク市場で一時3.8%安。年初来では14日時点で28%下落していた。
同社は昨年、「メイク・イット・ア・ダブル(Make It a Double)」戦略を発表し、主力事業であるウイスキー事業を2倍に、「エル・ヒマドール」や「エラドゥーラ」ブランドを含むテキーラ事業を3倍に拡大することを計画。急成長している、ふたを開けるだけですぐ飲めるアルコール飲料、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)市場へのさらなる進出も目指していた。
だが、それ以降、米国の酒類輸出の減少により同業界は低迷しており、トランプ米大統領の貿易戦争に起因する緊張によって状況はさらに悪化。カナダでは米関税に対する抗議運動で、州政府が運営する販売店から米国産ウイスキーが撤去されており、このボイコットの影響を特に受けているブラウンフォーマンは8月、カナダでの売上高が60%近く減少したことを投資家に報告した。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の予測によれば、アルコールに対する意識の変化と消費者の慎重な支出により、29年まで米国の蒸留酒の販売高は年間1-2%減少する可能性がある。
今年に入り同社の株価が業績不振で急落した後、ホワイティング氏は今後厳しい時期が訪れると警告。最近では、今会計年度の売上高において、1桁台前半の減少を見込むと改めて表明した。
原題:Brown-Forman Tempers Growth Ambitions as Spirits Demand Softens(抜粋)
--取材協力:Janet Freund.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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