米国で身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」の攻撃により、州や地方自治体などの債券発行体が債務関連書類を掲載する主要プラットフォームを利用できない状態が続いている。

影響を受けているのは、4兆3000億ドル(約650兆円)規模の米地方債市場の中心的な情報流通サイト「MuniOS」だ。

ミシガン州アナーバーに本社を置くテクノロジー企業イメージマスターが運営するこのウェブサイトは、数日前からサイバー攻撃によって停止している。事情に詳しい複数の関係者が非公開情報だとして匿名を条件に明らかにした。

MuniOSは、地方自治体などの発行体が債券の募集書類を公開するために利用するサイトで、投資家やアナリストが発行前の取引に関する情報を確認するための主要な情報源となっている。

市場関係者によると、現時点で取引の遅延は確認されていないが、障害の影響で一部の発行体が慣行を見直し、「BondLink(ボンドリンク)」など別のプラットフォームへの移行を進めているという。

イメージマスターの担当者はコメントの要請に応じていない。

米国の州や市、交通機関、空港、大学などは地方債市場を通じ、インフラ整備向けの資金を調達している。発行体は通常、MuniOSのようなウェブサイト上で募集要項を一般公開し、機関投資家から個人まで幅広く投資を呼びかけている。

関係者によると、今回のMuniOS停止は発行体や投資家、銀行家、弁護士らを悩ませているが、これまでのところ取引自体は通常通り進行している。

影響を受けた一部の関係者は、PDFファイルを直接やり取りするなどして対応。資料を閲覧できない投資家からの電話対応に追われている関係者もいるという。

ランサムウエア攻撃では、ハッカーがコンピューターシステムをストップさせ、機密データを盗み出して金銭を要求する。最近ではアサヒグループホールディングスや自動車メーカーのジャガー・ランドローバー・オートモーティブなどの大企業も標的となった。

地方債市場でもサイバーリスクへの懸念が高まっている。信用格付けアナリストの間ではリスク要因として注目が高まり、昨年はデトロイト郊外の自治体が債券発行で得た資金がハッキングにより盗まれる事件も発生した。

MuniOSは1999年に開設された。ブルームバーグは2017年、MuniOSが当時70%以上の市場シェアを有していたと報じていた。

原題:Cyber Attack Ensnares $4.3 Trillion Muni Market’s Key Site (2)(抜粋)

--取材協力:Elizabeth Rembert、Lynn Doan.

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