(ブルームバーグ):米国の高等教育界はトランプ政権下で大きな変化に見舞われており、大学の出願プロセスも変わりつつある。
学生たちはこれまでも多くのストレスにさらされてきた。最も選抜の厳しい大学の合格率は急落し、学費は年10万ドル(約1500万円)に迫る。
そして今、トランプ政権が連邦資金援助を大幅に削減し、ダイバーシティー(多様性)政策の見直しを進めている。高校3年生は厳しさを増す環境の中で、出願準備に取りかかっている。
最も注目すべき動きの一つが、トランプ大統領が求める留学生ビザ(査証)取り締まりだ。これは、大学の財政と入学者募集戦略に打撃となっている。
今年はビザ取得のための面接が遅れており、各大学は例年と同じ数の留学生を受け入れることができるか、見通せずにいる。早期出願申請のほとんどは11月1日が締め切りで、今年ならではのさまざまな傾向が生じている。

多様性に関する質問なし
一部の大学は、受験者のアイデンティティーに焦点を絞った小論文の課題を取りやめた。
大学入学における積極的差別是正措置(アファーマティブアクション)を終了させた2023年の連邦最高裁の決定を受け、多くの学校が学生に出願の際に自身の人種について論じることを認める質問を追加した。
だがここ数カ月、当局は出願書類で人種を表す項目を使用しているとみられる学校を調査している。
バージニア大学は「自身の視点形成に影響を与えた過去の経験や背景」について記述するよう求める設問を削除した。これには「コミュニティー、育ち、教育環境、人種、性別、その他の背景要素」が含まれる可能性があった。
デューク大学も、「性的指向、性自認、性表現」について問う設問と、自身が「異なる」と感じる点や「それが経験やアイデンティティーに与えた影響」を記述させる設問を削除した。代わりに、人工知能(AI)を使用する、またはしない状況を論じる設問を追加した。
バージニア大学広報のベサニー・グローバー氏は、高校卒業生の出願校数が過去最多に達している現状を踏まえ、「学生を支援するため、今年は簡素化した出願書類にした」と説明した。
早い締め切り
フロリダ州で大学進学コンサルティング会社を創業したマンディー・ヘラー・アドラー氏は、従来はアイビーリーグ(北東部名門私立大8校)が中心だった早期出願が、志願者を確保しようとする動きの中で普及しつつあると述べた。
早期出願では、学生は合格した場合入学することを約束する、拘束力のある合意書と共に申請する。これにより大学は、合格者の入学率を高められる。通常、こうしたプログラムの合格率は高めで、学生にとっても有利になり得る。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校は、州内在住の早期出願者に対し、州外志願者の結果発表より数週間早い12月下旬に合否通知を行う。
シカゴ大学は、対面またはオンラインのプログラムを修了した学生を対象に、9月1日-10月15日までの期間に出願を認め、3週間以内または11月1日までに合否結果を受け取れる仕組みを新たに導入した。
動画課題
デューク大学やヴァンダービルト大学、セントルイス・ワシントン大学など、多くの大学が志願書類の一部として任意の動画課題を追加している。ほとんどは動画プラットフォームを通じて提出でき、制限時間は2分程度だ。
例えばノースウェスタン大学は志願者に対し、「60-90秒の動画で、あなたの価値観、視点、経歴や経験など、他の出願書類では十分に伝わらないと思う重要な要素を共有」してもよいと伝えている。

合格率改善か
入学審査の専門家は、米国の大学への留学志願者が今年減少すると予測している。
24-25年度には、少なくとも一部の留学生がビザ取得に苦労したり、他の学校への進学を選択したりしたため、スタンフォード大学やデューク大学などの学校が、直前に補欠リストから学生を繰り上げ合格させた。今年も同様の事態が起こり得る。
留学生に助言する大学カウンセラーは、ビザの問題で米国の大学入学が制限される場合に備え、米国以外の大学も志望校リストに含めるよう勧めている。一方、米国人学生は今年、リスクを取り競争率の高い大学を目指すのではとも考えられる。
大学進学コンサルティング会社アクセプトUの共同創業者、スティーブン・フリードフェルド氏は「留学生の受け入れが大幅に制限される中、可能性を試すためにこれらの大学に申し込む学生が増えるかもしれない。同時に、今年は留学生で定員を埋めることが難しいと認識した大学が、より多くの国内学生を受け入れる可能性もある」と指摘した。
原題:Top Colleges Remove Identity-Focused Essays After Trump Attacks(抜粋)
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