(ブルームバーグ):クレディ・スイス救済で消滅した約170億ドル(約2兆6000億円)相当の債権について権利を持つ投資家グループは、リーマン・ブラザーズのような補償を期待している。
スイスの裁判所が出した判断が、クレディ・スイスのその他ティア1債(AT1債)保有者の期待を高めた。裁判所はAT1債を無価値とした当局の命令を違法と判断。最終的に高額の補償につながり得る長い法廷闘争への道が開かれた。
破綻したリーマンに対する債権を安値で買った投資家は、巨額の利益を得た。一部の債権者は元本全額の返済を受けただけでなく、多額の利息も受け取った。クレディ・スイスのAT1債保有者も同様のリターンを期待していると、投資家2人が匿名を条件に語った。
事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べたところによれば、レッドウッド・キャピタル・マネジメント、ダイアミター・キャピタル・パートナーズ、140サマー・パートナーズがAT1債に関する権利を保有している。各社の担当者はコメントを控えた。
AT1債消滅時に同債券へ投資していたファンドを運用するアトランティコムニウムのファンドマネジャー兼調査責任者ロマン・ミジニアック氏によると、同社は複数のシナリオを検討している。
元本と未払い利息の全額を取り戻せる可能性から、株主が受け取った額に近い30億スイスフラン(約5700億円)程度の支払い見通しまで、さまざまな想定がある。
不透明かつ複雑
ミジニアック氏は「この件は依然として不透明で複雑だ。仮に債券保有者が補償を受けることになっても、その金額は不確定だ」と述べた。
市場価格には楽観的な見方が反映されている。事情に詳しい関係者によると、限られた二次市場で取引されるクレディ・スイスAT1債に関する権利は、スイスの裁判所が14日に判断を公表した後、額面1ドル当たり約12セントから約30セントへと急騰した。
一方、連邦金融市場監督機構(Finma)は既に、裁判所の判断を不服として上訴する意向を表明している。また、同裁判所はAT1債の無価値化命令の取り消しについて最終決定を下したわけではないため、債券保有者が補償を受けられるしてもまだ先のことだ。
リーマン・ブラザーズの場合、欧州子会社が発行した債券の投資家が補償を受けたのは、破綻の10年以上後だった。 「非常に前向きな第一歩だが、決着したわけではまったくない」とミジニアック氏は述べた。
原題:Credit Suisse AT1 Bondholders Angle for Lehman-Style Payouts (1)(抜粋)
--取材協力:Esteban Duarte、Lucca de Paoli.
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