フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの株価急伸により、同社の最高経営責任者(CEO)で創業者のベルナール・アルノー氏の資産が1日で約190億ドル(約2兆8700億円)膨らんだ。その一方で、これがフランス国内の富裕層課税論争に油を注ぐ可能性がある。

ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、LVMHの好決算を受け15日のパリ市場で同社の株価が12%上昇し、アルノー氏(76)の純資産は1920億ドルに達した。株価上昇による同氏の資産増加としては過去2番目の規模となった。

ベルナール・アルノー氏

LVMHが14日発表した7-9月(第3四半期)売上高は、市場予想に反して増加に転じた。これはアルノー氏と同社の双方にとって転換点となる可能性がある。パンデミック期の旺盛な需要を追い風に、アルノー氏は2022年にイーロン・マスク氏を抜いて世界一の富豪となったが、中国を中心に高級品需要が鈍る中でその後ほどなく首位の座を譲った。

今回の資産急増は、フランス国内で富裕層課税案を巡る論争が高まる中で起きた。経済学者ガブリエル・ズックマン氏が提唱した富裕税は一部の左派政党から強い支持を得ている。

アルノー氏は先月の英紙サンデー・タイムズのインタビューでズックマン氏を批判。偽りの学術的専門性を用いて、自由主義経済を破壊しようとするイデオロギーを広めていると非難した上で、「個人として国内で最も多くの税を納め、経営する企業の納税額もトップクラスの私をなぜ彼は巻き込もうとするのか」と反論した。

富裕層課税を巡る議論はフランス政治の不安定化を助長している。2026年度予算案には、高所得層への課税強化や持株会社の資産に対する新税導入が盛り込まれる可能性がある。

LVMHの好決算により高級ブランド業界への楽観的見方が広がり、エルメス・インターナショナルやケリングの株価も上昇した。

原題:Luxury Tycoon Arnault’s Wealth Soars Amid Tax Debate in France(抜粋)

--取材協力:Jack Witzig.

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