自民党と日本維新の会は16日午後、新たな連立政権樹立も視野に政策協議を開始する。合意できれば、首相指名選挙では維新の支持を受けた自民の高市早苗総裁が勝利する公算が大きくなる。

政策協議は15日の党首会談で確認した。政策協議は自民から高市氏と小林鷹之政調会長、維新から藤田文武共同代表、斎藤アレックス政調会長が参加する。維新が重視する社会保障制度改革や首都機能を代替する「副首都構想」のほか、両党間に隔たりのある企業・団体献金規制など「政治とカネ」を巡る問題が議題になる見通しだ。

維新の吉村洋文代表は政策協議が20日までに合意すれば、首相指名選挙で同党が高市氏に投票する考えを明らかにしている。藤田共同代表は16日午前に開いた両院議員総会で経過を報告し、所属議員に意見を求めた。

公明党の連立離脱を受け、臨時国会での首相指名選挙に向けた各党の駆け引きが活発化している。衆院会派で35議席の維新が高市氏に投票すれば自民と計231議席と過半数の233に近づく。自民、維新の政策協議がまとまるかが今後の政局の焦点だ。立憲民主党は維新、国民民主党による統一候補擁立をなお模索する。

マーケットコンシェルジュ代表の上野泰也氏は、15日付のリポートで、「自維連立」が実現すれば、高市政権は財政による景気刺激を志向するとみられる上、衆参の与党議席数が過半数に近づくため株の買い材料だと指摘した。

一方、債券市場では、高市首相の誕生で日本銀行による追加利上げが困難になるとみられ短中期ゾーンに買い圧力がかかる一方、財政拡張懸念から超長期ゾーンには売り圧力がかかるとみている。為替市場では、追加利上げの後ずれや財政懸念から円売り圧力につながると予想した。

16日の外国為替市場で円相場は対ドルで151円付近で推移している。米連邦準備制度理事会(FRB)幹部による利下げ示唆を受け、ドルは主要通貨に対し全面安となっており、自民、維新の政策協議開始への為替市場の反応は限定的となっている。

社会保障改革、副首都構想

会談で高市氏は、連立政権樹立を含めた首相指名選挙での協力を吉村氏に要請。吉村氏が政策協議の開始を受け入れた。

吉村氏は、高市氏からは維新が重視する社会保障制度改革に賛意を得たほか、副首都構想にも同じ考えだとの表明があったことから、「政策協議を開始する土台はあると判断した」と説明した。

これに対し、高市氏は維新について「基本政策はほぼ一致している」と記者団に語った。外交やエネルギー政策は自民と「あまり変わらない」とし、他の政策での詰めに時間を割くことになるとの見通しも示した。

両党間の調整が難航する可能性があるのは、公明が自民との連立を離脱する契機となった「政治とカネ」を巡る問題への対応だ。

公明は企業・団体献金の受け皿を政党本部と都道府県組織に限定する案の受け入れを迫ったが、自民が回答を留保した。維新はより厳しい同献金の全面禁止を主張しており、自民との協議で取り上げる方針だ。自民は一定額を超える献金は企業・団体の名称や寄付額を公表するなど透明性の向上を訴えている。

自民党の鈴木俊一幹事長は14日、献金禁止までは踏み込んでいない公明案についても「自民党のまさに財政面からの成り立ちを全く否定するものだから、丸のみすることはできない」との見解を記者団に明らかにしていた。

野党党首会談

首相指名選挙を巡っては、立憲民主党が野党統一候補の擁立に向け、維新や国民民主党に連携を呼び掛けている。自民、維新の会談に先立ち行われた3党党首会談では安全保障やエネルギー政策に関して一致に至らず、幹事長らが継続協議することになった。

統一候補と想定される国民の玉木雄一郎代表は、会談で立民の野田佳彦代表からは政権構想は3党を軸とした少数与党になると発言があったとして、「仮に私が首相に選ばれたとしても政権運営が厳しい状況になる」と記者団に語った。

首相指名選挙の日程を巡っても、与野党間での協議が続いている。衆院事務局によると15日の議院運営委員会の理事会では21日に国会を召集することを決定したが、選挙の実施日については合意に至らなかった。

共同通信によると、自民党が同日に実施する日程を提示したものの、野党側が政党間協議が続いているとして応じなかったという。

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