(ブルームバーグ):破綻した英金融ベンチャー、グリーンシル・キャピタルとの取引で数億ドル規模の損失を被ったとして、クレディ・スイスが取引への関与があったソフトバンクグループを訴えていた裁判で、ロンドンの裁判所はソフトバンクGに有利な判決を下した。グリーンシル創業者のレックス・グリーンシル氏について、裁判官は厳しく批判した。
15日の判決文で、グリーンシル氏は流動性が枯渇していた自社の「本当の状況」をクレディ・スイスに隠すとともに、債務再編交渉で関係者をあざむいたと、ロバート・マイルズ裁判官は指摘。グリーンシル・キャピタルとの取引により、クレディ・スイスのファンドに投資していた投資家は、総額4億4000万ドル(現在のレートで約670億円)の損失を被った。
クレディ・スイスは、グリーンシルの経営が既に悪化し資金の返済は不可能になることを十分承知しながら2020年に同社の債務再編をお膳立てしたとして、ソフトバンクGを提訴。ソフトバンクGの目的は、自らの資金をグリーンシルから引き揚げることができるようにするためだったと、クレディ・スイスは主張していた。
この裁判では、グリーンシルがソフトバンクGと行った一連の取引や、ソフトバンクが大株主だった米建設企業カテラとの関係の再編過程が検証された。マイルズ裁判官は、グリーンシル氏の法廷証言について自分を「可能な限り有利に見せようと作り直された」ように見えると断じた。
判決では、ソフトバンクGに対する請求を棄却し、同社は再編交渉で「誠意ある」行動を取り、実際、クレディ・スイスの投資家に利益をもたらすことを意図していたと論じた。
ソフトバンクGは発表文で、「本日の判決は当社の正当性を完全に証明するもので、訴訟が責任転嫁を狙った根も葉もない試みだったことが確認された」とし、「当社は誠実に行動した。その事実を判決は明確にした」と主張した。
クレディ・スイスを買収し、訴訟を引き継いだUBSグループは「全ての利害関係者の利益のため、最大限の資金回収に向けて全ての適切な措置をとる」とコメントした。
グリーンシルは2011年に破綻したが、その数カ月前にソフトバンクGは15億ドルに上る緊急のつなぎ融資提供を拒否していた。破綻を受け、クレディ・スイスはグリーンシルの金融商品を購入していた100億ドル規模のファンドを凍結し、段階的な清算を開始した。
「グリーンシル氏は、グリーンシル・グループの存続のために相当のリスクを取ることもいとわなかった」とマイルズ裁判官は指摘し、「ソフトバンクGから流動性を調達できることに期待をかけ、クレディ・スイスをあざむく用意があった」と非難した。
また、グリーンシル氏はクレディ・スイスが取引に同意することはないだろうと認識していたとし、クレディ・スイスとしての「利益がこの取引によって損なわれることがグリーンシル氏には分かっていた」と裁判官は結論づけた。
この裁判は、グリーンシル氏が自身の企業の破綻について公の場で証言した初めての機会となり、2021年に英議会の公聴会に出席して以来初めて公に姿を現した。
原題:Greensill Criticized as SoftBank Wins Suit Over Investor Losses(抜粋)
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