(ブルームバーグ):高値更新を続けてきた日本株の先行きに国内政局や米中摩擦再燃が影を落とす中、相場の支え手として企業の自社株買いへの期待が広がりつつある。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストの試算では、4月以降に東証株価指数(TOPIX)構成企業が発表した自社株買い計画のうち、最大2兆円分がまだ実施されていない。発表額と実施額に乖離(かいり)があり、これまでの株高で「買いにくいと思っている企業がやや多い」印象だと言う。
ここにきてTOPIXが連日で4月以来の大幅安に見舞われ、アナリストらは売りが強まる局面で自社株買いが加速する傾向に注目している。日本取引所グループのデータによれば、日本銀行の利上げと米国景気への懸念が重なり株価が急落した2024年8月第1週は、事業法人の現物株買越額が5060億円と同年最大となっていた。
武居氏は、自民党と公明党の連立解消や首相指名を巡る不透明感、米中の貿易摩擦に対する懸念は当面続くと予想。実施余地が残る企業は自社株買いに動く可能性が高いとの見方を示す。

ソフトバンクグループは、8月に期限を迎えたプログラムでの自社株取得額が計画の約66%にとどまった。後藤芳光最高財務責任者(CFO)は8月の決算説明会で、株価が想定していた水準を超えたことから、今回の取得を終了したと説明した。開示資料によると、同社が最後に自社株買いを実施したのは6月。株価はその後約2倍になり、TOPIXをアウトパフォームしている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、株価の上昇局面では企業が高値で買うことを嫌うケースはよくあると指摘。逆に株価が下がれば自社株買いをしやすくなり、「下値を支える主体として機能する」と話した。
MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは、決算発表が集中する今後数週間は企業が自社株買いを控える可能性があるとみる。その上で、株価の調整が決算発表シーズン終了後も続いた場合、企業が下値をサポートする大きな存在の一つになり得ると期待している。
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