米自動車ローン会社のトライカラー・ホールディングスと自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループの相次ぐ破綻で市場が動揺したが、米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の口からは、投資家を安心させる言葉は聞かれなかった。

ダイモンCEOは14日、業績が予想を上回る7-9月(第3四半期)決算発表後のアナリストとのオンライン会議で、「そうした事態が起きると、私のアンテナが反応する。言うべきでないだろうが、ゴキブリを1匹見たら、恐らく他にもいる。この件は誰もが警戒すべきだ」と発言した。

サブプライム(信用力の低い個人向け)自動車ローンを提供していたトライカラーに続き、部品メーカーのファースト・ブランズも破綻したことで、信用市場に衝撃が広がった。企業が過去最速ペースで借り入れに動き、投資家に大きな利益をもたらす状況での出来事だった。

ダイモン氏は「景気下降が起きれば、特定の分野で通常より大きな信用損失が発生するのではないかと疑われる。BDC(事業開発会社)と上場プライベートクレジットファンドの状況を自分で調べてみるといい」と語った。

一般的な金融機関を介さず、ファンドなどが非上場企業に直接貸し付けを行うプライベートクレジット市場は1兆7000億ドル(約258兆円)規模に達する。プライベート市場プレーヤーは伝統的な銀行の商業貸し付け分野に進出し、これら業者向けの融資が銀行のローンポートフォリオに占める割合が拡大している。

プライベートクレジット市場に投資するBDCから投資家は資金を引き揚げており、BDCが株主への配当を減らす状況が背景にある。業界最大規模の非上場ファンド、ブラックストーン ・プライベートクレジット・ファンド(運用資産750億ドル)も先月、配当減額を明らかにした。

BDCの株価パフォーマンスは、より幅広い株式相場を反映するS&P500種株価指数との格差が今年に入り際立っている。

「他の人々が考えるより少し悪い結果になるだろうと私はみている。これら全ての人々が採用した全ての融資リスク評価基準をわれわれは把握していないからだ。彼らは何を行っているか承知しており、長年業界にいるわけだが、全員が賢明なわけではない」とダイモン氏は述べた。

 

トライカラーを巡っては、同社が自動車ローンを融資する際、JPモルガンやフィフス・サード・バンコープが与信枠を設定し、短期資金を提供していた。トライカラーの突然の経営破綻により、JPモルガンは1億7000万ドルの貸倒損失計上を余儀なくされ、最も楽観的な投資家にとっても黄色信号が点滅する状況となった。

原題:Dimon’s ‘Cockroach’ Fear Revives Threat of Cracks in Credit (1)(抜粋)

(JPモルガンの貸倒損失などを追加して更新します)

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