14日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小反落。米中の貿易面での対立が投資家心理を重くした。

S&P500種は上昇する場面もあったが、最終盤に下落。トランプ米大統領が中国との食用油貿易を停止する可能性を示唆したことが響いた。

ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「貿易と関税の問題が今年の株式市場に問題を生じさせている。われわれは、この動向をきわめて注意深く見極めていくことになる」と述べた。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はこの日、労働市場の見通しが引き続き悪化しているとの認識を示した。10月の利下げ観測が裏付けられたとの見方が広がり、株式相場は朝方の下げから上昇に転じていた。

パウエル議長はまた、FRBが数カ月以内にバランスシートの縮小を停止する可能性があることも示唆した。実際にそうなれば、翌日物の資金調達市場の流動性を維持するための重要な措置となる。

JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ氏は、パウエル議長の発言が次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ観測を「強く裏付けた」と述べた。エバコアのクリシュナ・グーハ氏は、FRBの二大責務達成に向けた見通しはおおむね変わらなかったとし、FOMCが今月利下げに踏み切る用意があることが示されたと指摘した。

トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「パウエル議長は量的引き締め(QT)をいずれ終わらせることに重点を置き、流動性に関する潜在的な問題を取り上げた」と指摘。「こうした発言は政策スタンスをよりハト派的な方向に導く内容だ」と述べた。

大手行で構成されるKBW銀行株指数は大幅高。この日発表が始まった金融機関の決算が堅調な内容だった。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)が世界のファンドマネジャーを対象に行った調査で、人工知能(AI)関連株がバブル状態にあると指摘した回答者の割合が最多となった。

BofAの10月調査では、回答者の約54%がハイテク株は割高だと回答した。9月は半数近くがこうした懸念を否定しており、見解が逆転した。世界の株式が過大評価されているとの懸念も、今回の調査でこれまでの最高を記録した。

シティグループのマーク・メイソン最高財務責任者(CFO)は7-9月(第3四半期)決算発表後の会見で記者団からAIについて質問され、「いくつかのセクターに一定の過熱感が見られる」のは否めないと発言。

「現在の株式バリュエーションや株価収益率(PER)を見れば、一部のセクターは過熱気味ないし割高だと考えざるを得ない。今後どう推移するかを見守ることになろう」と述べた。

外為

ニューヨーク外国為替市場では、ドル指数が反落。バランスシート縮小の可能性などに言及したパウエル議長の発言後、指数はこの日の安値を付けた。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、前日比0.2%安。午前中には0.3%上昇していた。

円は対ドルで上昇し、欧米の取引時間帯では1ドル=152円台前半から151円台後半での推移。米中の貿易を巡る対立再燃が、逃避先通貨である円を支えた。スイス・フランも対ドルで上昇した。

ユーロはドルに対して上昇し、一時0.4%高の1ユーロ=1.1615ドルを付けた。ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が発表した10月の期待指数が上昇した。

フランスのルコルニュ首相は議会のキャスティングボートを握る社会党の支持を確保した。16日に予定される内閣不信任投票を乗り切れる可能性が高まった。

米国債

米国債市場では短中期債が上昇(利回り低下)。パウエル議長が今月の利下げ観測を補強したとの見方が背景。

2年債利回りは一時、2022年以来の低水準近辺で推移した。

TDセキュリティーズのジェナディー・ゴールドバーグ氏とオスカー・ムニョス氏は「FRBは10月のFOMC会合でバランスシートのランオフ終了を正式に発表するだろう」と指摘。「QTが終了すれば資金調達市場の余力が増し、利回り曲線全体にわたってタームプレミアムが低下する」と述べた。

また、「FRBは10月と12月に利下げを実施し、ターミナルレート3%に向け、2026年にさらに3回引き下げると引き続き見込んでいる」と付け加えた。

原油

ニューヨーク原油先物相場は反落。貿易を巡る米中間の緊張悪化に伴いリスク資産の妙味が低下したほか、国際エネルギー機関(IEA)が来年の原油供給過剰について過去最大規模になると予想したことが手掛かり。

米中間で報復の応酬が続いている。中国は、韓国造船大手の米子会社への制裁を発表した。米国による中国海運・造船業界の調査への対抗措置だとしており、同日から実施する。制裁対象となるのはハンファオーシャンの米関連企業5社。個人・法人ともにこれら企業との取引が禁じられる。

IEAの月報によると、世界の原油供給量は2026年、需要を1日当たり約400万バレル上回る見通しで、年間ベースでは前例のない供給超過となる見通しだ。

パウエルFRB議長は講演で、労働市場の見通しが引き続き悪化しているとの認識を示した。10月の追加利下げを見込む市場の期待を後押しするメッセージとなった。

バッファロー・バイユー・コモディティーズのマクロ取引責任者、フランク・モンカム氏は「原油が日中安値を離れたのは、パウエル議長のハト派的発言に伴うリスク基調の転換を受けた動きだ」と分析。ただし、原油の需給は依然として弱気に傾いており、相場の回復が続いたとしてもウェストテキサスインターミディエート(WTI)では60-62ドル水準が強い上値抵抗帯となる可能性が高い」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は前日比79セント(1.3%)安の1バレル=58.70ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.5%下落の62.39ドル。

金相場は3営業日続伸。スポット価格はニューヨーク時間午後3時45分現在、前日比30.46ドル(0.7%)高の1オンス=4140.73ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は30.40ドル(0.7%)上昇の4163.40ドルで引けた。

原題:Wall Street Rattled Anew by US-China Trade Worries: Markets Wrap

Stocks Rise as Powell Keeps Fed-Cut Wagers in Play: Markets Wrap

Dollar at Low as Powell Signals Possible End of QT: Inside G-10

Oil Hits Five-Month Low on Glut Forecast and US-China Tensions(抜粋)

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